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便を観察してみよう!

[2021.04.09]

※便の観察

 食物を摂取すれば、体の中で消化・吸収されて便として排泄されます。理想的な便の形状はバナナ状といわれますが水分が80%、わずかな食べかすや腸内細菌を含みます。食物を摂取して短い時間で排便があれば下痢、長く腸にとどまっていれば便秘になりやすいです。水分が多ければやわらかい便になり、水分が少なければカチカチのかたい便になります。特に高齢者は、加齢、疾患、薬剤の影響などで下痢や便秘になりやすいです。

 

※下痢

 下痢は一般的に1日の便の重量が200ml(g)以上とされていますが、実際は便の重量を計測するよりも排便回数と便の性状で判断することが多いです。泥便状(泥のようにドロドロの便)は下痢の一歩手前の状態です。水様便(水のようなビシャビシャの便)は腸で水分がほとんど吸収されていない状態です。こういった性状では体の状態もととのっておらず、腸の粘膜も弱っていることが多いです。

 下痢の要因として、炎症性腸疾患、大腸がん、乳糖不耐症、消化不良、薬剤性などがあります。こういった場合には、消化・吸収しやすい食事、腸内環境の改善、薬剤の副作用などを検討します。下痢を繰り返すと体の水分や電解質が失われますから、下痢を止めると同時に、水・電解質を補給しましょう。

 下痢が長期化すると、亜鉛やたんぱく質などの栄養素の不足に繋がりますし、CDトキシンといって偽膜性腸炎につながることもあるため注意が必要です。腸の感染が疑われるときや炎症性腸疾患などでは粘膜便が見られます。下部消化管の炎症や腫瘍、出血。壊死を生じているような状態の虚血性腸炎、悪性腫瘍、感染性胃腸炎では、血便(血が混ざった赤い便)と粘膜便(ネバネバの便)が出ます。

 便秘を改善するための緩下薬の乱用によって下痢に見えることがあります。栄養ケアにおいて、便がやわらかいほうが良い場合もあります。代表的な例として、肝不全の場合です。肝不全では肝性脳症といってアンモニアがたまりやすくなります。それを防止するためあえて1日に複数回の排便を促すケースもあります。下痢による不具合が生じてないかをみて、便の状況を判断しましょう。

 

※便秘

 2017年に発行された「慢性便秘症ガイドライン」では「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排便できない状態」と定義されました。

 便秘は腸のなかに長くとどまるので、水分が吸収されてカチカチになります。便が出ないことでおなかが張り、食欲低下に繋がります。こういった場合には排便習慣や糞便姿勢、薬剤の調整、水分摂取や腸内環境の改善などで排便を促します。

 正常な便は胆汁の色で黄褐色です。下痢では腸のなかにいる時間が短く、栄養が消化・吸収される前に排便されてしまうので色が薄く、黄色になります。便秘になると腸のなかにとどまる時間が長くなり、栄養が多くなりすぎた状態で排便されてしまうので茶褐色から暗褐色になります。

 排便回数は1日1回が望ましいとされていますが、経腸栄養で成分栄養剤や消化態栄養剤で管理されている場合や慢性便秘の場合では排便回数が少なくなります。排便がないと腸の動きが止まってしまい、腸閉塞(イレウス)になり、お腹が詰まってしまいます。便秘を改善するため、過剰な食物繊維の摂取は腸閉塞の原因になります。高齢者の場合、便秘の改善は栄養ケアと必要に応じて薬剤を使用することも必要です。

 

※ブリストル便形状スケール

 便の方かたさと形状の指標は国際的に使用されているブリストル便形状スケールが有名です。数字が小さいと便秘、数字が大きいと下痢となります。ブリストル便形状スケールが3~5の範囲が適切な排便です。

 高齢者で多い老人性細便(細くてブチブチと切れたような便)は食事量が足らない場合や腹筋が弱っている人に見られます。こういった場合は、食事摂取量の確保と便のかたさを増すために、食物繊維の摂取、腸内環境の改善、リハビリテーションで筋力増加を促します。

 便は一般的によいにおいとはいえませんが、健康状態が整っている場合は便のにおいが残りません。しかし、健康状態が整っていない場合の便はツンとした刺激臭があり、便臭も強く残ります。最近はグアーガムを用いた水溶性食物繊維など、腸内環境を整える栄養補助食品が発売されていますので、そういった製品を利用して腸内環境の改善を促しましょう。

 

参考文献

Nutrition Care 2020.5 高齢者の栄養ケア MCメディカ出版

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