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糖尿病と心不全との関係

[2026.05.24]

  近年の日本は高齢化社会でありますが、今後更なる高齢者の増加に伴って高齢心不全う患者さんが大幅に増加することが予想されています。感染症患者さんの爆発的な広がりになぞらえて「心不全パンデミック」とも呼ばれてます。

 そもそも心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して全身に十分な血液を送れなくなることです。息切れやむくみ、疲れやすさなどを引き起こし、繰り返す入院や最後には死亡につながる重大な病気です。 糖尿病がありますと心不全の発症が2~4倍に高まることが知られてまして、心不全は重要な糖尿病合併症の一つと捉えることができます。

 

 国立健康危機管理研究機構と日本糖尿病学会は共同して構築した大規模データベースJ-DREAMSを用いて、糖尿病患者さん1万8千名あまりを対象に、心不全の発症に関する特徴とリスクを振り返り解析により検討されました。その結果心不全を患った方々は、平均年齢が高く、男性の割合が多く、糖尿病罹病期間も長期に及んでいました。また、腎臓病、心臓の冠動脈疾患、肝疾患、末梢動脈疾患、認知症などの合併症の頻度が、心不全を患ったことがなかった方々と比較して明らかに高い傾向を示しました。                              また1321名が新規に心不全を発症し、その解析により冠動脈疾患、腎機能障害(eGFR)、BNP高値が独立したリスク因子として同定されました。(eGFRは糸球体濾過率と言って腎機能を表します。値が低いほど腎機能は低下してます。60以下は慢性腎臓病となります。BNPは心臓の機能を表す指標です。これらは血液検査でみることができます。)腎機能が低下するほど心不全リスクが上昇することが明確に確認できたということです。特にeGFRが30未満、尿中アルブミンが300以上の方々では、危険率が著しく高く、腎機能の悪化が心不全発症に直結することが示唆されました。尿中アルブミンは尿蛋白の主要な成分で、正常は30以下です。

 糖尿病は腎臓病発症のリスクで、その腎臓病は心不全発症のリスクということです。腎臓の機能が低下すると、体内の余分な水分や塩分をうまく排泄できなくなり、これが体液貯留をきたしたり血圧を上昇させたりして、結果として「心臓」に過度な負担をかける、つまり心不全を引き起こすことになります。

 

 海外ではさらにいろいろ調べられています。                                           米国一般住民2万7千人あまりにおける腎機能別の死亡率と末期腎不全への移行率をみた追跡調査においてはCKD患者さんでは末期腎不全に至るよりも、むしろ心血管病で死亡する確率が高いことが示されました。          また、アルブミン尿は単に腎症の指標であるのみならず、血管の内皮障害の指標とも考えられ、アルブミン尿増加は、腎臓とは異なる機序によって心血管病のリスク因子となる可能性があります。実際、一般住民および糖尿病のある方において、アルブミン尿、尿蛋白の増加に伴い、心血管病発症のリスクが上昇することが示されております。 またCKD患者さんを対象とした複数の集団を対象とした解析においても、尿蛋白量とeGFRの両者がCKDの進行、心血管病の発症、および死亡に関連することが示されてます。更にeGFRが同程度のCKD患者さんにおいては、蛋白尿が多いほど末期腎不全への進行および心血管病発症リスクが高くなることも注目です。細かいことを述べてしまいましたが、                                                   まさに腎臓をまもることは、心臓を守るということです。

 

 糖尿病によって血管や臓器に負担がかかると、自覚症状がないうちに少しずつ心臓や腎臓の機能が低下していくことがあります。心不全の進行を理解するのには次のステージ分類が有用です。

ステージA:まだ心臓の形も機能も正常。でも、糖尿病や高血圧などのリスクがある段階です。

ステージB:症状はないけれど、検査すると心臓が少し肥大していたり、動きが変化したりしている段階です。

ステージC:息切れやむくみといったいわゆる「心不全の症状」が出てくる段階です。

大切なのは、症状が出る前の「ステージAやB」の段階から、心臓への負担を減らす対策を始めることです。

 

 心不全の治療においても糖尿病はその治療薬において関係をもっております。

近年の糖尿病治療において、画期的なくすりとして登場したのが「SGLT2阻害薬」です。              もともとは血糖値を下げる薬として開発されましたのですが、実は心臓と腎臓を保護する非常に強い力があることが分かったのです。                                              この薬は血液中の余分な糖を尿と一緒に体の外へ出します。その際、余分な「塩分(ナトリウム)」や「水分」も一緒に排出してくれるため、パンパンに張った血管の負担を軽くして心臓にかかる圧力を下げ心機能を改善するのです。 ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)とエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)は心不全治療薬としても承認され、心不全治療で優先される4つの薬「ファンタスティック4」の一つとなっています。 ダパグリフロジンが腎機能の悪化、末期腎不全、腎不全死など、または総死亡の複合リスクを39%低下させ、透析導入を遅らせることを示されました。                                                  心血管疾患既往がある2型糖尿病の方において、エンパグリフロジンは総死亡・心血管死・心不全入院を約3~4割減少させました。                                               更にダパグリフロジンとエンパグリフロジンは慢性腎臓病の治療薬としても承認されています。

他にもともと糖尿病の薬として開発されたが、心臓や腎臓を守る可能性が証明された薬剤としてはGLP-1受容体作動薬があります。もちろん血糖降下作用は1番と言っていいほど強力です。                     GLP-1受容体作動薬のセマグルチド(商品名:オゼンピック、リベルサス)は2型糖尿病のある方の主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)を13~26%減少させることが示されてます。特に脳卒中抑制効果が特徴的です。そのため、動脈硬化疾患リスクの高い2型糖尿病のある方では優先的に用いられます。              STEP-HFPEFという試験では、セマグルチド2.4mg週1回投与により心不全症状、身体機能、運動能力が改善しました。

                                       

心不全の治療は心臓の動き(エコー検査など)やBNP、腎臓の数値(eGFR)を見ながらこれらの薬剤やほかの薬剤を使っていくことになります。

しかし何と言っても予防が大切です。                                                                  心不全予防には血糖、血圧などの生活習慣病のコントロールとともに毎日の「食事」と「運動」が大切になります。                                  

心臓と腎臓を守る減塩を意識しましょう。                                                  「少し息が弾む」程度のウォーキングなどの適度な運動をしましょう。                                               肥満や喫煙は心臓・腎臓ともに臓器障害の大きなリスクです。減量や禁煙を心がけましょう。

 今の糖尿病治療の最終ゴールは、単に検査結果の「HbA1c」を良くすることではありません。そのさきにある「心不全や腎不全を防ぎ、(健康寿命)を延ばすこと」です。このことを頭に入れておくと良いでしょう。

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