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肥満外来の紹介です。

[2025.05.26]

まずは肥満、肥満症の定義 です

 肥満とはどの様な状態を指すのでしょうか。肥満とは脂肪の脂肪組織への過剰な蓄積によりBMIが25以上に至った状態のことです。さらにBMIが35以上になれば高度肥満と呼ばれます。                     BMIは体格指数と言いまして、体重(kg)÷⾝⻑(m)÷⾝⻑(m)で計算されます。

例えば身長163cm(1.63m)、体重73kgでは、73÷1.63÷1.63=27.4、BMI27.4となります。

それに対して肥満症とは何を指すのでしょうか。肥満症とは肥満に起因する健康障害を来たしているか、それを来たす可能性が高い状態をさします。同様にBMIが35以上であれば高度肥満症となります。

単なる肥満は状態であって疾患ではありません。肥満があってもこれを是正する必要があるかどうかは、体重の増加に伴う健康障害が起きているかどうか、あるいは起きる可能性が高い状態かどうかによります。肥満による健康障害は次の様なものがあげられます。

  • 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症・痛風
  • 冠動脈疾患
  • 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  • 脂肪肝
  • 月経異常・不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群

10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)

11)肥満関連腎臓病

肥満、肥満症の治療目標は

 従いまして肥満症の治療は、減量や体重を単に正常化させることが目標ではなく、体重を減らすことによってこれらの健康障害を治療、進展阻止、または予防することです。

肥満症の治療目標としては、BMI25以上の肥満症で3%以上、BMI35以上の高度肥満症では5~10%の減量です。減量率と健康障害の改善度はその健康障害の種類によって異なります。

では本題の肥満、肥満症の治療は

⾷事療法、運動療法、薬物療法があります。1つずつ説明します。

食事療法

 肥満症治療においては、生活習慣に介入していくことはどうしても必要となります。その際最も基礎となるのが食事療法です。摂取エネルギー量の制限が最も有効で確立された方法です。一般的には目標体重×エネルギー係数でエネルギー摂取量を算出します。

目標体重はアジア人における死亡率が低いとされるBMI20~25をもとに、個々の患者の状態に応じて設定されます。エネルギー係数は労作が軽度、普通、重度に応じて、25~30、30~35、35~kcal程度と設定します。高度肥満症の場合には20~25kcalです。

例えば目標体重60kg、普通労作で 60×32=1,920kcal となります。 

しかし、総エネルギー量から300~500kcal/日減らすとか、30%減らすとかが現実的かもしれません。       また通常の食事療法の1食(例えば夕食)を糖質と脂質が少なくタンパク質(約20g)を十分含んだフォーミュラ食(180kcal)に置き換えて1日1000~1200kcal程度の食事療法をすることも可能です。

糖質制限とかを行う方法もありますが、短期的には有効ですが長くは続かないことが多く、また長期的には死亡率を挙げてしまいます。短期間であればやってみる価値はあるでしょが、厳しい糖質制限は医師と相談が必要です。

運動療法

 まずは座位時間を減らすことです。仕事にしろ、遊びにしろ立ち上がってよく動き回ることです。        膝関節などの問題がなければ有酸素運動として通常の歩行を1日30分程度、週150分を目標に開始しましょう。達成できるようであれば1日プラス10分程度歩行時間を徐々に増やすことも考えてみましょう。

またエネルギー摂取制限に伴う、筋肉量の減少を予防するためレジスタンス運動(スクワット、腕立て伏せ、腹筋、背筋)も重要で、特に下肢の筋力維持のためスロースクワットなどを少ない回数から開始することをお勧めです。

薬物療法 

 薬物治療はあくまで補助的なものでありまして、⾷事や運動などの⽣活習慣改善が基本であることは間違いありません。これから挙げます薬物療法は⾷事療法、運動療法を頑張っても減量ができない肥満症の方々に、この治療がきっかけとなってより減量に積極的に取り組めることを⽬的としております。 継続的に薬物治療を⾏っていくのではなく、減量に成功したら徐々に薬を減らしていき⽣活習慣改善のみで体重を維持できるようにしていきましょう。

サノレックス(内服薬)

 ⾷欲抑制薬で、⾷欲の中枢神経に作⽤し⾷欲を抑えます。                           第一世代の肥満症治療薬です。BMI35以上で3か⽉以上の⻑期処⽅は依存性をきたす可能性があり、効果減弱も指摘されているため処⽅ができません。また2週間処方が原則です。                              ⼝渇、便秘、悪⼼・嘔吐、 不眠などの副作用もあります。しかしうまく活用できれば3カ月で3~5%の減量が期待できます。

 

ウゴービ(週1回の注射薬です)

  GLP-1というインクレチン製剤です。元来膵臓から出ているホルモンでその効果が強く出るように修飾されたものです。注射が必要になりますが週に1回、腹部や⼤腿に打ちます。先端に⾃分で注射針を取り付ける⼿間がありますが、⾮常に細い針で痛みはほとんどありません。針の付け替えのいらない1回使い捨てタイプもあります(ウゴービSD)。週1回0.25㎎を4週間、その後0.5㎎を4週間、その後1㎎から2.4mgへと徐々に効果・副作⽤を⾒ながら増量していきます。                                                   肥満症の日本人を含む東アジア人(平均体重88kg、BMI32)を対象とした68週間のSTEP6試験では、1.7mgで約10%(-8kg)、2.4mgで約13%(-10.6kg)の体重減少を認めました。

一般的な副作⽤としては嘔気、下痢、便秘、食欲減退などがありますが使っているうちに軽減していくこともよくあります。

リベルサス (内服薬)

 注射薬ウゴービの内服版です(同じ薬剤です)。注射はどうしても苦⼿という⽅にお勧めです。3㎎錠を4週間、その後7㎎錠を4週間、 その後効果・副作⽤をみながら14㎎錠へと増量していきます。飲み⽅は毎⽇起床時の空腹時に120ml以下の少量の⽔で内服 をして、その後30分間は飲⾷は⼀切避けます。また他の内服薬との同時服⽤も避けてください。内服⽅法は少し⼿間ですが、オゼンピック注射と同等の効果を得られるはずですが胃からの吸収に個人差が出てきてしまいます。

副作⽤は嘔気、下痢、便秘、食欲減退とオゼンピックと同様です。

 

ゼップバウンド (週1回の注射薬)

 最近登場したGIP/GLP-1受容体作動薬です。GLP-1 にGIPというインクレチンホルモンが加わったものです。週1回2.5㎎を4週間、その後5㎎を4週間、そして7.5㎎から10mgへと徐々に効果・副作⽤を⾒ながら増量していきます。  2型糖尿病合併例を含まない日本人肥満症患者(平均体重92kg、BMI34kg/m)にゼップバウンドを72週間投与したSURMOUNT-J試験では10mgで約18%(-16kg)、15mgで約23%(-21kg)の体重減少を認めました。これらの値は、日本人同士の集団でのウゴービとゼップバウンドを直接比較した試験はないということと、ウゴービのSTEP6試験では糖尿病合併例を3割含んでおり、健常人より糖尿病患者の方が減量効果が低いということより、ゼップバウンドの優越性を示すものではありません。

副作⽤としては同様に嘔気、下痢、便秘、食欲減退などです。

 これらのGLP-1 やGIPの添付文書上での重大な副作用は、低血糖、急性膵炎、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞が挙げられてます。まれではあるものの注意は必要です。また高齢者においては過剰な体重減少に十分な注意が必要です。

 繰り返しにはなりますが、継続的に薬物治療を⾏っていくのではなく、減量に成功したら徐々に薬を減らしていき⽣活習慣改善のみで体重を維持できるようにしていくことが大切です。 そのうえで肥満症外来を利用してみると良いでしょう。

 

 

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