運動と糖尿病について
今回は運動について考えてみたいと思います。
先ずは運動は糖尿病に対してどのような効果があるのでしょうか?
羅列してみますと
1ブドウ糖、脂肪酸の利用が促進されて血糖値が低下する。
2インスリン抵抗性が改善する(インスリンの効きが良くなる)。
3エネルギーが消費され減量の効果がある。
4加齢や運動不足による筋萎縮や、骨粗鬆症の予防に有効である。
5高血圧や脂質異常症の改善に有効である。
6心臓や肺の機能を良くする。
7爽快感、活動気分を高める。 などなどです。
(糖尿病治療ガイド2021)
これだとなかなかピンと来ないでしょうが、具体的にはその効果は有酸素運動や、筋肉運動(レジスタンス運動)を週150分(1日に換算して大体20分)やるとHbA1cは0.66%下がると言われてます。どうでしょうか?。
更には歩行数を3,000歩増やすと10年後には、死亡が253%、虚血性心臓病が16.2%、脳卒中が21%減ると言うこともあります。
1日1時間以上歩行すると大腸がんの発症が62%減ると言う報告もあります。運動ががんの発症を抑制するのです。
さてこのコロナ禍、世の中の運動状況はどうでしょうか。特に高齢者の場合、感染するのが怖くて外出を控えてしまう、老人の施設も閉鎖になり行くとこがない、テレビを見ていて更に不安になってほとんど家からでなくなってしまった。と言う話もよく聞きます。ステイホームで身体活動時間が2/3にまで減ってしまったという報告もあります(日本の都市部在住の高齢者1600名の調査)。運動をしないと骨格筋量は必ず減少します。しかも糖尿病があるとその減少量は更に大きくなります。
では筋肉量を減少させないためにはどうしたら良いでしょう。厚生労働省や糖尿病学会は次のようなことを勧めています。
“有酸素運動は、中強度で週に150分かそれ以上、週に3回以上、運動をしない日が2日間以上続かないように行い、レジスタンス運動は、連続しない日程で週に2~3回行うことがそれぞれ勧められ、禁忌でなければ両方の運動を行う。”としてます。
すこし難しいことを言ってますが先ずは歩くことです。単純に1週150分を7日で割ると1日20分となります。20分は2,000歩に相当します。今よりもプラス2,000歩を目標にしましょう。1日の歩く量を見るにも歩数がよいです。携帯でかなり正確に測れますので、アプリをインストールしてみると良いです。最終的には1日8,000~10,000歩行くと良いですね。
高齢の方やテレワークの方は1日の中で決まった時間に散歩やジョッギングすることをお勧めします。例えば朝に30~60分などです。人から離れていればマスクはしなくて大丈夫です。また、室内でも手軽な歩行運動はできます。1分間100~120歩ぐらいのペースで行う足踏み運動です。膝は必ずしも高く上げなくても良いです。少し息が上がるが、誰かと話しながらとか歌を口ずさみながらできる位の強さで。音楽を聴きながら、TVを見ながら10分から30分位出来ると良いでしょう。
手軽に出来るレジスタンス運動で血糖に良い運動はやはりスクワットです。1回に10回繰り返し1日3回出来るとよいです。スクワットが出来ないときは、椅子に腰掛け、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返します。高齢者には少しきついので無理はしないようにしましょう。女性の方は気軽に筋肉トレーニングできるカーブスがあっていいですね。カーブスに通所している1万名あまりの、5年間の経過観察でトレーニング頻度が多いほど糖尿病発症が少ないという報告ががあるのです。
更に注目すべきことは、2021年の米国糖尿病学会のリコメンデーション(推薦)です。これは座位時間を少なくしろというものです。座位時間の長い人は、特別な運動でなくても良いので座位でない日常的な活動、例えば散歩、ヨガ、家事仕事、家庭菜園、ダンスなどの時間を多くとることが大切だと言っております。日本糖尿病学会も、日常の座位時間が長くならないようにして、軽い活動を合間に行うことが勧められるとステートメントしてます。再度簡潔に強調しますと “30分に1回、座位を打ち切り、軽い運動をする” と言うことです。
30分ごとに坐位をやめ、3分間歩行やレジスタンス運動をやることによって食後血糖値の低下が顕著に認められたという報告があります。ほとんど座っている人に対して、75%位座っている人、50%位座っている人、25%位座っている人、そしてほとんど立っている人に比べてこの順で死亡率が減少するという報告もあります。また1週間の運動量が少ない人ほど座位時間の少なさが死亡率の増加に影響するとのことです。気をつけたいものです。
もちろんレジスタンス運動は筋肉量を増やします。それをやれば良いのですが、高齢者やテレワークの方とって先ず大切なのは不足しがちな日常生活の活動量を増やすことです。
皆さんが、年齢、体力、時間的な余裕、趣味に合わせて自分なりの運動、日常活動を実践してみると良いでしょう。