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果物は上手に摂りましょう

[2022.08.29]

 夏も盛りとなり、美味しい果物が多く出回っている昨今です。それはそれでうれしいものではありますが、8月になって春ごろから活動量も増え、低下し始めたヘモグロビンA1cが再び上昇してきた患者さんも目立ってきました。お話を伺ってみますと、親せきから、知人からの頂き物が多くありどうしても食べてしまうということでした。またここら辺では自分のとこでスイカ、スモモを作っているのでそれを食べてしまうという方もおります。秋になると自家用の柿を作っていてそれを食べ、更にはそれを干し柿にして冬も食べている方も多くおります。

 果物というと健康的と考え良い印象を持っておられるが多いかと思います。確かに健康に良いと言われるビタミンC、カリウム、食物繊維、ポリフェノールなどを豊富に含んでいます。これらは野菜からも多く摂れるものではありますが。

 血糖管理という点からこの果物を考えてみましょう。

果物に含まれる果糖は、直接血糖値を上げることはありません、ただ果物に含まれる糖は、果糖だけではなく、ブドウ糖やショ糖(砂糖)も含まれているのです。果糖・ブドウ糖・ショ糖の中で、最も吸収が早く、血糖値を上げやすいのはブドウ糖です。この為低血糖時にはブドウ糖の摂取が勧められています。また、ショ糖も血糖値を上げやすいため、ブドウ糖やショ糖が多い果物の方が血糖値は上がりやすくなります。果物により含まれる糖質の種類や量が違うことも知っておきましょう。果糖・ブドウ糖・ショ糖それぞれの内訳は下の表の様です。ブドウ糖やショ糖が多い果物は少なめにした方がよさそうです。                                                                     (さかえ 2019年9月号)

 果糖は直接血糖値を上げないのですが、脂肪になりやすい糖であることは以前から知られています。果糖の摂取量の増加が肥満や糖尿病の発症リスクを高めるとする報告や、高果糖食が肝臓での脂肪合成を促進し、食後の血中の中性脂肪を上昇させることが示されております。肥満や高中性脂肪血症を起こしやすいということです。これはメタボリックシンドローム(通称メタボ)に繋がりますね。

さらに果物に含まれる果糖は、肝臓でブドウ糖に変換されます。食べすぎれば最後には血糖値を上げることになります。

 果物は自然の恵みです。糖尿病食品交換表の中でも表2に分類され毎日とることが推奨されてます。果物を上手に取れば毎日の生活での潤いを与えてくれますものです。

それでは、果物の適量とはいったいどのくらいのものでしょうか? 簡単な覚え方があります。

  • りんごやなし、グレープフルーツなどの大きな物は半分
  • バナナやかきなど中ぐらいの物は1個
  • みかんなどの小さい物は2個

と覚えましょう。

食品交換表によりますと糖尿病患者さんの果物の適量は、1日1単位です。1単位とは80キロカロリーのことです。

下の図を参照してください。         食品交換表 第7版

重要な点は、一日1単位(ミカンなら一日2個まで、柿なら1個まで)と、上限を決めておくことです。

 果物の食べるタイミングついても少し注意が必要です。

皆さんは果物をいつ食べていますか? 朝食のときに、3時のおやつに、また夕食後一息ついてから召しあがっているケースが多いのではないかと思います。食べるタイミングは朝食または昼食後のデザートとして食べるのが理想的です。日中に食べるなら、そのあと歩きに行くなど積極的にからだを動かしてみましょう。また、夕食後に食べるなら、そのぶんのエネルギーも含めて食事の内容を考えましょう。

 ケーキやアイスクリームなど、どうしても嗜好食品をやめられない方は、まずは果物に変えてみるのもよいかもしれません。

 ついでではありますが、果物に含まれる果糖以外に工業的に作られた果糖があるのをご存じですか。果糖ブドウ糖液糖とういう長たらし名前の糖です。果糖ブドウ糖液糖とは、とうもろこしのでんぷん(コーンスターチ)を酵素的に処理して一旦ブドウ糖にしたあと、別の酵素により果糖にしたもの(異性化といいます)で工業的に作られております。加工食品の原材料名には果糖ブドウ糖液糖、異性化糖とも表記されているもので、清涼飲料水(ジュースやソーダ水)やお菓子など多くの加工食品に使用されてます。これらの果糖は蛋白質にくっ付きやすくその活性を低下、変化させてしまいます。AGEとなる力はブドウ糖の10倍と強力なのです。AGEとは最終糖化蛋白質で糖尿病合併症の原因の一つです。

 食料別の果糖摂取と糖代謝の関連をみた解析では、果物からの果糖摂取では影響はないが、果糖が含まれた飲料水によるエネルギー過剰摂取が糖代謝を悪化させるという報告があります。 政府の健康な人の果物摂取目標は200gとしています。果物の種類にもよりますが果糖は2~8%程度含まれてますので、ざっと10g程度の摂取となります。この位でしたら果糖が悪い結果をもたらすとはないでしょう。食品交換表で言えば1日1単位までですね。

やはり気を付けなければいけないのは清涼飲料水やお菓子です。果糖は甘みの強い糖でショ糖(砂糖)の1.7倍、ブドウ糖の2.3倍と言われてます。この為嗜好性が強まり、更に甘いものを多くほしくなります。清涼飲料水500mlに30~50g程度の炭水化物が含まれてますが、そのうち50%(15~30g)程度が果糖(果糖ブドウ糖液糖)となります。残りはブドウ糖です。毎日大量に摂取するのは問題です。また果糖は摂取後小腸で急速に代謝、分解されますので一気に飲むよりは分割してちびちび飲んだ方が良いでしょう。

結論として果糖は何からどの位摂ったら良いかを考えますと、

    果物は適量を

    清涼飲料水やお菓子は極力少なく

ということになります。

ケーキやアイスクリームなど、どうしても嗜好食品をやめられない方は、まずは果物に変えてみると良いでしょう。

 

 

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