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新型コロナワクチンと糖尿病

[2021.02.27]

 新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19と略します)のワクチンも遅らばせながら四月から高齢者に開始されようとしてます。このワクチンに対する期待と不安は両者とも大きいものがあるでしょう。ワクチンの有効率は報道等で紹介されおりその有効率は70~95%と言われてます。しかし更に基礎疾患別に有効性を検討した論文が米国から出てきました。それは糖尿病患者さんで1,338例中発症は0で有効率100%というものでした。期待が持てそうですね。しかしBMI(肥満度)30以上の肥満の方は有効率95.8%と少し低下してました。 基礎疾患別の重症化リスクでも糖尿病、肥満で3倍、重度の肥満(BMI40以上)で4.5倍とも言われてますので、ウエイトコントロールにも十分気を使いたいものです。

 

 ワクチンに対する期待は大きいですが不安の方はどうでしょうか。

例えばファイザー社のmRNAワクチンでは、接種後10万人に1人の頻度でアナフィラキシーの発症が報告されてます。いままでの通常ワクチンの100万人に1人の頻度と比べると10倍の頻度です。しかし適切な処置をすればこれは助かりますので接種後の経過観察が大切になってきます。 アストラゼネカ社のワクチンはアデノウイルスベクターを用います。ウイルスベクターは遺伝子治療に持ち入られますが過去には有害事象が発生しました。ワクチンの安全性については、注意すぎることはないでしょう。

ワクチン接種には、個人の発症や重症化を防ぐ効果があるとともに、社会全体の接種率が上昇することで、COVID-19の拡大を防ぐ効果が期待されます。最終的に、コロナワクチンを接種するかどうかは、ワクチンに関するこれから出てくる情報を参考にしてご自身が判断されるのが良いでしょう。またこれらのワクチンは、発症や重症化を予防しますが、感染予防効果まであるのかはまだ明らかではないですので、感染対策は同様に続ける必要があります。

 

  ここで一寸注意すべきことは、糖尿病患者は特にそうでない人と比べて新型コロナ感染症にかかりやすのではなく、重症化し易いということです。米国ではCOVID-19患者の10.9%が糖尿病患者であったこと、また中国では10.3%であったことが報告されてます。それらの国の糖尿病有病率が10.5%(米国),10.9%(中国)であることを考えますと糖尿病であってもCOVID-19に罹りやすいことはないと言えます。重要なことは糖尿病があっても血糖のコントロールが良ければ重症化率は低い(一般と同じ)ということです。

 実際、以前にもお話しましたが、COVID-19について、血糖コントロールが良好であった(平均HbA1c 7.3%)糖尿病患者の死亡率は1.1%であったのに対し、不良の群(平均HbA1c 8.1%)では11.1%であったとの報告が中国にありました。他にも似たような報告は幾つかあります。普段の血糖コントロールが悪いと、免疫能の異常からIL-6などのサイトカイン分泌の異常がおこることが知られており、サイトカインストームになりやすいといわれてます。その為、重症化後も血糖値が高いほどその後の死亡率も高いことが報告されてます。

 

 さて、昨年の非常事態宣言前後での血糖コントロール状況はどうだったでしょうか?

悪くなっている人ばかりではなく、良くなっている人もおります。詳しく見ますと

HbA1cの悪化した人は

  • コロナ渦前には良好な行動ができていたが、COVID-19への不安が強く、できていた食事、運動ができなくなった    
  • COVID-19に対してさほど不安はないが生活様式が変化してしまった
  • 生活基盤を失ってしまって、血糖コントロールどころではなくなってしまった

などがあげられます。これには十分な情報によって漠然とした不安を取り除く必要があるでしょう。また新しい生活様式に対応した食事、運動を考えていく必要があるでしょう。

HbA1cに影響がなかった人は

  • もともと食事、運動はできていなくて、コロナ渦でも大きな変化がなかった人

 ~コロナ渦をきっかけに良い生活を考えてみましょう

  • もともと食事、運動は出来ていてコロナ渦でも大きな変化がなかった人。

~これが一番良いですね

HbA1cが改善した人は

  • COVID-19に対する不安が適度にあって、血糖コントロールをよくすることで感染予防をがんばった人も確実にいます。
  • COVID-19による生活様式(仕事や人間関係)の変化で逆に生活が安定した人

さて皆さんはどれに該当するでしょうか。

 

ウイズコロナ時代の糖尿病ケアはワクチンで新型コロナウイルス感染症の発症を予防し、血糖コントロールで重症化を予防するということになります。

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