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シックデイって聞いたことありますか?

[2021.01.24]

 シックデイとは、糖尿病患者さんがインフルエンザや胃腸炎などの感染症に罹り、発熱・下痢・嘔吐・食欲不振のため食事摂取ができない状態を言います。そして血糖コントロールが乱れることになります。 また、一般に糖尿病患者さんは感染症に罹りやすくなるばかりでなく重くなりやすい特徴がありますので注意が必要です。シックデイという英語は直訳すれば「病気の日」という意味です。 

 感染によるストレスでインスリンの必要量が一時期的に高まり、1型でも2型糖尿病患者さんでも血糖が上昇し、適切な原疾患の治療と血糖コントロールが行われないと、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)や高血糖高浸透圧症候群(HHS)というより重症の状態に進展してしまう可能性があります。 糖尿病性ケトアシドーシスはケトン体の増加により腹痛、脱水、昏睡へと進展する病態です。また高血糖高浸透圧症候群は高血糖、脱水により血液の浸透圧が上昇し昏睡になってしまう病態です。特に高齢者では口渇中枢機能が低下しており口渇感の訴えが少なく、高血糖の自他覚症状も乏しいことが多く、シックデイ時には容易にこの高血糖緊急症に進展しやすいものです。

 

 

 

 

 

 感染によるストレスによってカテコラミン分泌が増え、膵臓からのインスリン分泌抑制されること、感染による炎症性サイトカインが増大しインスリン抵抗性が増大することが急激な血糖の上昇の原因です。しかしシックデイでは食欲不振によって糖質摂取量が低下し、また嘔吐・下痢によって栄養素が十分吸収されず、逆に低血糖をおこしてしまうこともあります。注意が必要です。

シックデイ時においては以下のような注意が必要と一般的に言われてます。

  1.   1型糖尿病の方はシックデイ時にはインスリンを中止しないことが原則です。むしろ必要インスリン量は増える場合が多いのです。
  2.  SMBG(血糖自己測定)が可能でしたら1日4回ないし必要であれば3~4時間ごとに血糖を測定し、測定した血糖値によってはインスリン増量します。
  3.  可能な限り経口的(口から)に水分、炭水化物、塩分を摂取します(お粥、スープ、ジュース、アイスクリームなどで)。
  4.  脱水を予防するため水分は1日約2リットル摂取すること。
  5.  糖質摂取不足によって脂肪や蛋白の分解がおこりケトン体産生が亢進するため、糖質は1日100~200g摂取すること。ご飯250gで糖質100gです。
  6.  高血糖の際は、清涼飲料水は更に血糖を上げてしまうので多飲は避けましょう。また消化管に悪影響を及ぼすので、牛乳や炭酸飲料は控えるましょう。口渇が強いからと言って、電解質補給をうたった糖質入り(甘い)スポーツドリンクは多量に飲んだりしないように。
  7.  経口摂取ができない場合、発熱が続く場合など自己対応が困難な場合は、医療機関を受診することが必要です。         

シックデイルール

 

外来で患者さんの思い違いはいくつかあるので注意しましょう

「食事を食べないのだから心配なのは低血糖」

「あまり食べられないが、糖質は血糖が上がるので摂らない」

「血糖が高いので、食事を抜こう」

などです。上記1.7.の項目をよく理解しましょう。

 

内服薬を飲んでいる場合はどう対応したらよいでしょうか。

 

食事摂取不良の場合は低血糖などの副作用を起こすため、薬剤別に対応する必要があります。主な要点は

  • インスリン分泌促進薬(アマリール、グリミクロン、グルファスト、シュアポストなど)

       低血糖のリスクがあります。食事摂取が半分の時には半量、それ以下の摂取量では中止します。

  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ベイスン,セイブル、グルコバイ)

  食欲不振・嘔吐・下痢・腹痛など消化器症状を認める時は中止します。

  • ビグアナイド薬(メトグルコ)

     これは服薬中止です。

  • インスリン抵抗性改善薬(アクトス)

  休薬可能です。

  • DPP-4阻害薬(ジャデアンス、グラクティブ、テネリア、トラゼンタ、ネシーナ)

  食事が全く摂れないときは中止します。

  • GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ、トルリシティ、オゼンピック)

  食事が摂れない時、消化器症状の強い時は注射をスキップします。中止により血糖が上昇してしまう時には受診をします。

  • SGLT2阻害薬(ジャデアンス、フォシーガ、カナグル、スーグラ)

  脱水、正常血糖ケトーシスを呈することがあります。必ず服薬を中止します。

しかしこれらの事柄は平時にはなかなか覚えられないものです。単純に割り切って症状が強い場合はすべての経口血糖降下薬は中止でも良いかと思います。但しGLP-1受容体作動薬は注射薬ですが効果もかなり強力ですので血糖コントロールが悪い方はできれば主治医の判断を仰ぐと良いでしょう。

日ごろから繰り返しシックデイ時の対応を覚えておくことで、シックデイに続く高血糖緊急症や低血糖症入院を防ぎたいものです。

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