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糖尿病♯食事のいろいろ

[2022.08.29]

カーボカウントと糖質制限の違い

 「カーボカウント」は糖質を数えて糖質の摂取量をコントロールすること、「糖質制限」は糖質の量をコントロールすることです。どちらも糖質に着目して血糖コントロールを行う食事療法です。この2つの食事療法の違いは、摂取する糖質量にあります。

 カーボカウントでの糖質の割合は、指示エネルギー量の50~60%となります。つまり適切な量は、「1日の指示エネルギー量×50~60(%)÷4(㎉)=1日の糖質(炭水化物)量」で算出されます。それをなるべく均等に朝・昼・夕の3食に分割すると、1食あたりの糖質量になります。

 一方、糖質制限での糖質量について明確な基準はありません。1日50g以下を目指す極端な糖質制限や、1日50~130gを目指す比較的緩やかな糖質制限などがあります。

 以上のように糖質量に違いがあるため、カーボカウントと糖質制限ではPFCバランス(たんぱく質・脂質・炭水化物)が異なってきます。カーボカウントではたんぱく質と脂質の合計が40~50%になるのに対して、糖質制限では60%以上がたんぱく質と脂質になります。脂質の過剰摂取は脂質異常症や動脈硬化症などのリスクになりますし、たんぱく質の過剰摂取は肝臓や腎臓への負担が増えることによる悪影響が懸念されています。

            P:たんぱく質  F:脂質  C:炭水化物

どの栄養素も過不足なくバランスよく摂取する

①炭水化物

 炭水化物は、糖質と食物繊維に分けられます。食物繊維は血糖値の上昇および排便コントロールに有効であるため、大切な栄養素です。

 糖質はというと、日本人の食事摂取基準では、脳、神経組織、赤血球などで利用するブドウ糖の量として、1日100gが必要とされています。糖質が不足している場合には、肝臓や筋肉での糖新生が促進されるため、肝臓の負担が増加したり筋たんぱく質の異化を助長する可能性があります。とくに運動時には、筋たんぱく質の異化を予防するために、糖質は大切な栄養素となります。

 

②脂質

 脂質は細胞膜の構成成分としての働きの他に、胃の動きを緩やかにして胃からの食物の排泄をスムーズにする働きもあります。その結果、満腹感を得られやすく、また食後の栄養素がゆっくりと吸収されることになり、食後の過剰な血糖上昇を抑制する効果も期待できます。

 

③たんぱく質

 たんぱく質は筋たんぱく質の合成に重要であり、インスリン感受性(インスリンの効きやすさ)の改善効果が期待できる栄養素です。最近では、サルコペニア予防のためにも積極的なたんぱく質摂取が推奨されています。

 

 以上のように、どの栄養素も大切なので、バランスよく摂取しましょう。

食べる順番

 栄養素をバランスよく摂取するのはもちろんのこと、栄養素の食べる順番が血糖値の上昇に影響を与えることが明らかになってきています。とくに野菜などの食物繊維を多く含む食品を、ご飯などの糖質を多く含む食品よりも先に食べることで、血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。また、野菜から先に食べることは血糖上昇への影響だけでなく、噛む回数が増えることで食事の時間が増えて、食べ過ぎを予防する効果も期待できます。

 また、肉や魚などのたんぱく質を多く含む食品を、糖質を多く含む食品よりも先に食べた場合でも、血糖上昇が緩やかになったという報告もあります。

 いずれにおいても、糖質を食べる順番を最後にする「カーボ(糖質)ラスト」という食べ方によって、食後の急激な血糖上昇を予防する効果が期待できます。ただし、前述の野菜やたんぱく質を先に食べる食べ方についての報告は、どちらも糖質を食べるまでに10分以上の時間を空けた場合の結果なので、早食いをしてしまうとその効果は得られないかもしれません。

民間療法は有益な点ばかりではない

 民間療法を行ったことがある糖尿病患者の割合は40~80%と、さまざまな報告がありますが、2人に1人は利用したことがあると考えることができます。

 世間一般には、血糖値改善に対して有益として、アボカドや玉ねぎなど様々な食品の情報があります。これらの食品によって血糖値が低下する可能性に期待したいところですが、実際にはエビデンスがほとんどないのが民間療法です。利用するにあたっては、デメリットがないかを確認しましょう。

 たとえばアボカドの場合は脂質が多く高エネルギーのため、減量が必要な患者にはデメリットになります。玉ねぎの場合は、野菜の摂取量が期待できるためよさそうですが、生の玉ねぎは腹痛などを引き起こす可能性があります。反対に、便秘に良かれと思って甘酒を摂取したことで、血糖値が悪化することもあります。民間療法を利用する場合には、メリットとデメリットを天秤にかけて判断する必要があります。

 また、民間療法として利用していた食品に、インスリン分泌促進薬などの薬品が混入されて被害がでたことがあります。主治医の先生や看護師、管理栄養士に一度相談や確認してから使用するようにしましょう。

 

 食事療法にはたくさんの種類や方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。糖尿病は長く付き合っていくものです。自分のライフスタイルにあった食事療法を一緒に考え、一緒に見つけていきましょう。

 

管理栄養士

ニュートリションケア 2018年5月号 糖尿病患者の治療と栄養指導より引用

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