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糖質制限食を考えてみましょう

[2023.05.28]

 糖質制限食は今やブームになった感がありますが、これに準じた事をやっておられ方は少なくはないでしょうか。どの位からの糖質量を糖質制限というのかという問題もありますが、ここでは最近の研究を基にしてその問題点を明らかにしてみたいと思います。

 紹介する最初の研究は2021年にBMJ誌に発表され、過去の文献ソースから大規模の解析を行ったものです。

成人2型糖尿病患者を対象に12週間以上の低炭水化物食(炭水化物摂取量が1日130g未満、または、2,000kcal食の26%未満)あるいは超低炭水化物食(総カロリーの10%未満)を評価したものです。評価項目は糖尿病の寛解でして、これは糖尿病治療薬の使用の有無にかかわらずHbA1c6.5%未満で判定しました。そのほかに体重減少、HbA1c値、空腹時血糖値をみてます。

 その結果6ヶ月時点での糖尿病の寛解率は低炭水化物食群が対照食群より高率でした(リスク差:0.32)。治療薬なしでの場合、低炭水化物食の効果は低下してしまいました(リスク差:0.05)。体重減少に関しては、6ヶ月時には低炭水化物食による臨床的に重要で大きな改善が求められました。

 12ヶ月までの糖尿病寛解率を報告した研究は少なっかたのですが、効果が小さいとするものから、糖尿病のリスクをわずかに増大するというものまで、結果はさまざまでした。12ヶ月時の体重減少に関しては効果がみられなかった。としてます。

 12か月もするとHbA1c、体重減少ともにその効果ははっきりしなくなると解釈されます。そもそも12か月も糖質制限を続けることはなかなか難しく、そこまで見た研究もわずかになってしまうということもありますが。

 

 低糖質食をさらに厳しくやれば(超低炭水化物食)改善効果は消失し、悪玉コレステロールは上昇しました。厳しい低糖質食は絶対避けるようにしましょう。

 同様なことは、2008年に発表されたダイレクト試験でも示されています。ダイレクト試験は低糖質食と低脂肪低エネルギー食を比較した初めてのきちんとした大規模の試験でした。それによりますと、試験開始後6か月まではHbA1cおよび体重減少は低糖質食の方が大きかったですが12か月になるとその差はかなり縮まり有意な差はなくなるというものでした。しかも低糖質食と低脂肪低エネルギー食との1日のエネルギー摂取量の減少はほとんど同じになり、低糖質といえども結局摂取エネルギー減少による効果が加わっていたものと考えられます。

 どうも糖質制限食はブームとなっていますが、長期的にみるとその効果は限定的と思われます。これには糖質制限を長期に続けることは困難であるという側面もあるからでしょう。

 糖尿病ではない一般人で低糖質ダイエットと低脂肪ダイエットの減量効果を比較した2018年のJAMAでの報告があります。

 対象者を低脂肪食群と低炭水化物食群に分け、低脂肪食群では調理や味付けに使用する油、脂肪の多い肉、全脂肪乳製品、ナッツなどを制限し、低炭水化物食群ではシリアル、穀類、米、イモ類などの炭水化物の多い野菜、豆類を制限し、それぞれを1日20g程度まで抑えたうえで、1年間定期的に食事介入を行いつつ脂質や炭水化物の摂取量を漸増させ脂肪摂取と炭水化物摂取との差が最大になるようにしました。

 その結果、体重は低脂肪食群で5.3kg、低炭水化物食群で6.0kgとそれぞれ減少して両者の間で差がありませんでした。低脂肪食群でLDL-コレステロールが減少し、低炭水化物食群ではHDL-コレステロールが上昇、トリグリセライドが減少しました。総エネルギー摂取量は各群ともに平均で2,200kcalから1,700kcalまで減少し、同程度でした。遺伝子多型、インスリン分泌能との関係はみられませんでした。どちらの食事療法でも同程度に減量が可能であるというが示されました。

 痩せることに最も重要なのは、エネルギーの総摂取量を減らすことであるというきわめて当たり前なことが科学的に示されたと言えるでしょう。

 

 一般には糖質70から130g以下を糖質制限食と呼ぶことが多いです。炭水化物という呼び名もありますが違いは食物繊維を含むか含まないかの差だけで糖質とほぼ同等と考えて良いでしょう。上限130gは標準的な糖尿病食で見ますと

    主食20gを1日3食

    おかず20gを1日3食

    間食 10g

という内訳になります。主食20gは

    ご飯では55g=半膳

    うどんでは100g=半玉

    食パンでは8枚切り1枚

に相当します。おかずの糖質量は計算が難しいですが、標準的な糖尿病食では1食20g位と言われてます。

 この130gは大切な数字でして、本来栄養学的には人間の活動において最低限必要な糖質量と言われてます。ブドウ糖しか利用できない脳、神経組織、赤血球の酸素消費には1日130g必要であります。更に肝臓からの糖の合成や筋肉や臓器の分解に頼らずに必要な糖質を食事で確保するにはご飯毎食100gとおかずで1食60g1日糖質180gは摂りたいものです。

 更に炭水化物(糖質)摂取比率と死亡率との関係を見た報告があります。アメリカの4つの地域で1万5千余りを調べた報告です。やはり炭水化物(糖質)摂取比率50%が1番死亡率が低かったのです。これより比率が低いとかなり急速に死亡率が上がっていきます。またこれより高くても死亡率が少しづつ上がって行きます。摂取比率50%と言うと1日1,600Kcalでは糖質200gに、2,000Kcalでは糖質250gに相当します。これを見ますと低糖質も考え物だと思われてしまいます

 これらのことから低糖質を真っ先に行うのではなく、食事習慣の改善する事が先ず1番先に大切でしょう。糖尿病治療ガイドにありますように

 1.腹八分目とする

 2.食品の種類はできるだけ多くする

 3.動物性脂肪は控えめに

 4.食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をとる

 5.朝食、昼食、夕食の3食を規則正しく摂る

 6.ゆっくりよくかんでたべる

 7.単純糖質(お菓子やソフトドリンク)を多く含む食品の間食をさける

 これらのことは昔から言われてることですが、それだけに真実であると言えましょう。

これらにつけ付け加えるならば、

      8.主食に全粒穀物を取りいれる

と言うことです。麦、玄米、十六穀米など食と同じような効果を期待できるからです。もちろん栄養学的にも優れてます。同じような効果を期待できるからです。もちろん栄養学的にも優れてます。先ずはこれらのことを実行し、その上で低糖質なり低脂肪低エネルギー食を実行していくのが合併症を防ぐには良いのではないでしょうか。

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