メニュー

肥満について考える

[2023.01.02]

今月は肥満について考えてみたいと思います。

  先ず「肥満」とはどういう状態でしょうか。この「肥満」とは体脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態をさしまして、肥満がただちに病気になるのではないことは皆さんもご存じかと思います。しかし健康障害を伴う肥満もあるのは事実で、この場合は「肥満症」と呼びます。医学的に治療が必要なのはこの「肥満症」でして、健康障害を伴わない肥満とは区別されます。

健康障害を伴う肥満症は減量することによってこれらの健康障害を改善することが期待できます。健康障害で代表的なのは、糖尿病、高脂血症、高血圧ですね。

 

  肥満の判定にはBMIを使います。BMIは体重(kg)/身長✕身長(m表示)で表します。例えば身長160cm、体重70kgでは、70/1.6 x 1.6でBMI27.3となります。肥満とは一般的にBMI25以上のものをさします。 BMIは普通一般に測定される体組成測定の脂肪重量との相関が高いこと、ウエスト周囲長との相関が高いことが知られてます。特別精密な測定であります二重エナルギーX線吸収法での体脂肪指標との相関が高いとのことでこのBMIが世界的に使われています。更にBMI35以上は高度肥満と判定され、肥満の重症型として区別されます。一度ご自身のBMIを計算してみましょう。

 BMIが増加しますと、冠動脈疾患や脳血管障害など肥満に関連して発症する健康障害や死亡リスクが増大するというエビデンス(証拠)があります。これらのことからもBMIは肥満の判定として有用なものと考えられてます。

 

 2019年の国民健康・栄養調査を見ますとBMI25以上の肥満者の割合は男女とも年々増加してるのが分かります(図)。この割合は男女ともに20歳代でもっとも小さいですが、男性では40歳代(39.7%)と50歳代(39.2%),女性では60歳代(28.1%)が肥満者割合がもっとも大きい年齢層となります。「肥満症」は、肥満に起因する健康障害を持っているか、それが予測される場合を指しまして、医学的に減量の必要が生じます。肥満が多くなってくれば当然「肥満症」も増えてきます。対策が必要となって来ます。

肥満症の診断基準に必要な健康障害は、羅列になりますが

12型糖尿病、境界型糖尿病

2)脂質異常症

3)高血圧

4)高尿酸血症・痛風

5)冠動脈疾患 6)脳梗塞 7)非アルコール性脂肪性肝疾患 8)月経異常・女性不妊 9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群 10)変形性関節症・変形性脊椎症 11)腎臓病

などなどで沢山の疾患と関連があるものですね。

 これらの中でも糖尿病との関連を見てみますと、アジア、オセアニア地方の27件の集団の研究で個人ごとのデータを集積して行った分析ではBMIが増加するとともに糖尿病の発症は直線的に上昇し、BMI2増加により27%も上昇すると推定しています。また18件の研究を集積した他の分析においても、BMI25.0以下を基準とした場合、過体重(25.029.9)では3.0倍、肥満(30.0以上)では7.0倍にも糖尿病の発症が上昇すると推定しています。これらの研究結果より、BMIやウエスト周囲長、ウエストヒップ比が大きいことは糖尿病発症の危険因子であることについて十分なエビデンスがあると考えらています。 

肥満を伴っていて境界型糖尿病を示す人に体重減少を目的として強力な生活習慣介入を行うことにより、糖尿病発症が4458%低下することがフィンランド、アメリカ、日本の研究で示されています。

 このような肥満に対していかに対策を立てるかを考えてみましょう。

先ず目標体重を立ててそれに近づけるということが考えられます。目標体重は先ほどのBMIから計算されます。一般的にはBMI22が理想的と言われてますが、日本人、アジア人におけるもっとも死亡率が低いBMI2025と幅があり、しかも年齢によって異なることが知られてます。従ってBNI22を一律に目標とするのではなくて、個人個人に応じた目標体重を決めることが大切となります。それにしても目標体重まで近づけるのはなかなか至難のことが多いものです。

しかし、介入する時の体重からわずかに3%減量させただけ、介入時と比較して、血糖、血圧、脂質などの健康障害について明らかな改善が認めたという報告が多くあります。

BMI35以上の高度肥満症の減量目標は510%と、肥満症の減量目標よりも大きく設定されることが多いです。しかし実際にはそれぞれの合併してる病気の病態、生活環境、意欲の違いによって減量目標は異なるものです。主治医の先生と話し合ってみると良いでしょう。

 

 低エネルギー食はその程度に応じ明らかな体重減少を来しますし、逆にエネルギー摂取量の過多は体重増加を来します。一般的には日々のエネルギーバランスのわずかな崩れの蓄積が体重増加と肥満を惹き起こしてると考えられます。この為、日々の食事と運動をいかに改善するかが大切となって来ます。

近年糖質だけを制限すれば痩せられる、血糖が改善すると言った本などが出回り、これを実行しようとする人が結構おります。しかし2020年に現れた大規模な研究を分析した報告では、糖質制限食、脂肪制限食は通常のエネルギー制限食より6ヶ月間の減量効果が大きかったです。糖質制限食と脂肪制限食による減量効果は同程度であったことが報告されました。しかしながら、いずれの食事療法においても12ヶ月間の減量効果は減退してしまいました。糖質制限食を続けると体調を崩してしまうことが多いです。また糖質制限食を長期に続けると、死亡率、心血管死が上昇することも多く報告されてます。やはり通常のエネルギー摂取量を少なくしていくことが王道ですね。

 

 更に大切なのは運動を併用するということです。食事+運動療法併用の場合に減量の効果が大きいことが分かってます。さらに、食事+運動療法併用の場合には、減量のみならず、身体機能や生活の質の向上、骨格筋量や骨密度減少の防止効果も認められてます。

更に更に、減量を進めていくには、有酸素運動(ウオーキング、サイクリングなどの十分酸素を取りながらの運動)とレジスタンス運動(スクワットや腹筋、腕立て伏せなど筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動)の併用が有用であると言われてます。

できればこの両者の運動を組み合わせて行いたいものです。

 しかし急に運動をやれと言われても普段運動習慣のない方は、なかなか踏み出せないものです。厚生労働省の健康日本21のアクティブガイドでは+10(プラステン)で身体活動を増やすようにと呼び掛けてます。先ずは生活活動においては、掃除で+10分、通勤で+10、散歩で+10分とこのいずれかで良いので頑張ってみましょう。運動ではウォーキング+10分、筋トレ+10分余計にやってみましょう。というものです。

その際3メッツ未満と3メッツ以上の生活活動と運動を組み合わせると良いでしょう。図を参照して下さい。

  

少しのエネルギー制限と活動量のアップで3%~5%の減量を達成し、健康障害のリスクを減らしていこうではありませんか。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME