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脂肪肝に気をつけましょう

[2022.09.27]

今回は脂肪肝について考えてみましょう。

  脂肪肝とはその文字通り肝臓に脂肪が貯まった病態を指しますが、健診などで血液検査や超音波検査をうけて‘脂肪肝があります’と言われた人は多いでしょう。受信者の約3割が脂肪肝という話もあります。そんなありふれた病態ではありますが、特に糖尿病患者さんは知っていた方が良い話があります。そんな話をしてみましょう。

先ず、脂肪肝があると糖尿病が発症したり、進行しやすくなるということです。

 糖尿病と脂肪肝には深い関連があります。脂肪肝があると、糖尿病の発症リスクは2倍以上になるということが近年報告されています。脂肪肝自体は自覚症状はほとんどなく、本人も気づかないうちに忍び寄り、進行するものですが、脂肪肝があると、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」というものが出てくるのです。 インスリンには肝臓や筋肉に働いて血糖値を低下させる作用があります。しかしその肝臓に脂肪が貯まると、インスリン抵抗性が生じてしまいます。その結果、インスリンが効きにくいため高血糖になります。血液中のインスリンは多くなるのに血糖は高くなるという状態です。

 次に、逆に糖尿病があると脂肪肝、肝障害の危険因子になるということです。

 世界の糖尿病患者さんにおける脂肪肝の平均罹患率は55.5%、アジア人においても52.9%と糖尿病のない人と比べて明らかに多いです。糖尿病があると肝硬変を発症する割合も4.73倍に上昇し肝がんのリスクも3.51倍にもなることが報告されてます。糖尿病が肝臓の線維化進展の促進因子なのです。線維化とは肝臓が硬くなり肝硬変に近づくことです。そしてその線維化はまたインスリン抵抗性を増悪させます。 結局、脂肪肝があると糖尿病を発症しやすくなり、糖尿病を発症するとその脂肪肝が進展し線維化が促進されます。促進された線維化がまたさらにインスリン抵抗性を強くし、糖尿病を悪化させるのです。こういった悪循環を起こしてしまいかねます。いきおい脂肪肝対策が重要であることが認識されます。

 脂肪肝は初期には自覚症状はあまりなく、本人も気づかないうちに忍び寄り、進行します。そのため発見が遅れる傾向があり、適切な治療を開始できないことが問題ではないでしょうか。

脂肪肝の原因を考えてみましょう。

 脂肪肝はアルコール多飲が原因であります「アルコール性脂肪肝」と、それ以外の「非アルコール性脂肪肝に分けられます。

 アルコール性脂肪肝は長期にわたる過剰の飲酒が原因となり生じるもので、長期とは5年以上、過剰の飲酒とはエタノール換算で一日60g以上とされています(常習飲酒家と呼ばれています)。エタノール換算で一日60gの飲酒とはおおよそ日本酒換算で三合、ビール中瓶三本(=1.5L)です。ただし女性の場合はこの三分の二程度の量でも生じるとされています。ウイルス感染等の他の原因が除外されれば、禁酒で改善が得られるのも特徴です。しかし放置しておけば、一部は肝炎や肝硬変に進展する恐れがあります。

ではどうすれば脂肪肝と分かるのでしょうか 

1つは血液検査です。その項目は

AST

ALT

γGT

血小板数

などです。健診を受けたら、これらの検査値をしっかりみましょう。

 AST、ALTは以前はGOT、GPTと言われてましたが、肝細胞でつくられる酵素です。肝臓でアミノ酸の代謝にかかわる働きをしており、肝臓に脂肪が溜まって肝細胞が壊れると、血液中に流れでます。その量の寡多によって肝脂肪の程度をみることできるのです。但し脂肪肝の程度が軽度でしたらこれらの値に異常がない事もあります。 血小板は血液中の細胞で、血液の止血にかかわるものですが、肝臓に線維化があると血小板が破壊され量が減ります。肝臓の硬さをみる項目です。

 実際の脂肪を確認する検査は超音波検査(エコー検査)とCT検査です。脂肪のたまり具合を判断できます。特にエコー検査は簡便で有用です。健診でもよく行われてますね。

「ナッシュ」とは

 最後にもう一つ、「ナッシュ」という病態に触れておきましょう。「ナッシュ」とは非アルコール性脂肪肝炎の略語です。脂肪肝に炎症が加わって肝臓に線維化が出現したものです。 脂肪肝だけでも、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの危険性が高くなりますが、「ナッシュ」に進展すると肝硬変や肝臓がんになるリスクも上昇します。

 肝細胞が線維化してくると肝硬変や肝がんへ進展する確率が高くなるため、その程度を知ることが重要になって来ます。

 

 

 「ナッシュ」への進展具合を見るのに参考となる指標がいくつかあります。特に有名なのが「Fib-4 index(フィブ4インデックス)」と呼ばれるもので、年齢とAST・ALTという肝酵素、血小板数によって算出される指標です。最近良く用いられています。これが高値を示した場合、特に注意が必要です。「Fib-4 index」は検索サイトで簡単に見つけられます。試しにご自分の値を入力してみると良いでしょう。肝臓の硬さを判別してくれるでしょう。例えばの例を挙げておきます。

 

 

脂肪肝を改善するためにはどうしたら良いでしょうか?

 食事でとった糖質は、通常はグリコーゲンとして肝臓に貯留されますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓に貯まります。余分な蛋白質や脂肪も変換されて脂質として貯まります。従って脂肪肝の根本的な原因は、食べすぎや運動不足などによる脂肪の過剰によるものです。

 そのため脂肪肝を改善するためには、生活習慣の改善に取り組むことが第一です。糖尿病や脂質異常症のある人は、それ自体も脂肪肝の原因となりますのでその治療をしっかり行うことが大切です。

 食事では、3度の食事をバランス良くとり、間食でカロリーの摂り過ぎにならないようにし、高カロリーの甘い清涼飲料も控えると良いでしょう。

 運動では、1日30分以上のウォーキングが良いでしょう。肝臓の脂肪は運動してから10分たたないと燃え出さないので、脂肪肝を改善するためにはウォーキングを少なくとも10分以上続けることが必要となります。週に3~4日は行いましょう。徐々に運動時間を増やしていくと良いでしょう。

食事療法と運動療法とも糖尿病の治療と同じですね。でもより体重をコントロールすることが必要となります。

しかし無理のない減量を心掛けることもとても大切です。急激な体重減少は脂肪肝の原因になります。急な減量をすると、筋肉が減少して代謝が落ち、体が消費するエネルギー量が減ってしまいます。その結果、肝臓に中性脂肪が溜まってしまいます。

 

先に述べましたように、血糖と脂肪肝はお互いに影響を及ぼし合います。無理のない減量で糖尿病と脂肪肝を同時に克服していけるとよいですね。

 

 

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