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臨床イナーシャなるものを考えてみる

[2019.10.09]

最近、生活習慣病領域で臨床イナーシャ(クリニカルイナーシャ)なる言葉をよく聞くようになりました。特に糖尿病領域では2018年に米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)が発表した「2型糖尿病の血糖管理に関するコンセンサス・リポート」がきっかけになっています。 臨床イナーシャとは、治療目標が達成されていないのに、治療が適切に強化されていない状態でありまして、これに陥らないようにと強調したのですイナーシャとは惰性という意味です。臨床イナーシャは「診療の惰性」や「臨床的な惰性」などと訳されます。血糖コントロール目標に達するのが早ければ早いほどのちのコントロールがよく合併症の発症率も低い、ということが幾多の大規模臨床試験で示されるているからです。

 

具体的な糖尿病の治療で言えば

  • それなりの事情があってなかなか食事療法や運動療法に踏み切れない
  • 食事や運動だけでは不十分で薬を飲む必要がある。薬を増量する必要があるのに、患者さんから拒否されてしまいそのまま経過をみてしまう。
  • インスリンの注射が必要なのに、患者さんに受け入れられてもらえずに

、そのまま前の治療を続けてしまう。

などです。

このような事の原因の一つには医療者側の責任もあります。医療者の事なかれ主義、情熱的不足が影響するでしょう。患者さんの深層がなかなか理解できないことにもよるでしょう。

 また患者さんが受け入れない要因としては、治療が強化される(薬が増える)=病気が悪くなったと感じること。新しい治療に対する副作用等の漠然とした不安感。経済的負担の増大などなどです。

 

 このような困難の解決には医療者と患者さんが腹を割って話し合える環境、すなわち信頼関係の構築が一番大切になってくると考える次第です。

 

 

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