メニュー

血圧は大丈夫です?

[2022.04.18]

糖尿病と高血圧はとても合併しやすいことはご存じでしょうか。

 

 一般に、糖尿病患者さんにおける高血圧の頻度は、糖尿病でない人に比べて約2倍高いのです。またその裏返しで高血圧患者さんにおいても糖尿病の頻度は2~3倍高いことが知られてます。この二つの病気はその生い立ちが関連し合ってるのではないかと想像されますね。実は糖尿病と高血圧はインスリンが働きにくいことを共通基盤として発症してるからなのです。少し難しく言いますとこの二つはいわゆるメタボリックシンドロームという病態の重要な構成因子であると言い換えることが出来ます。

 さらに注目されるのは糖尿病と高血圧の両者が合併すると、糖尿病特有の網膜とか腎臓とか神経の障害(細小血管障害と言います)だけでなく、動脈硬化、心臓血管疾患、そしてやはり腎臓疾患の発生頻度が足し算的ではなく掛け算的に増加するということです。 糖尿病患者さんにおかれては血糖値の方にのみ関心が集中し、血圧の方への関心が少なくありませんか。 先にお話しした事を具体的に以下に話してみましょう。そして血圧にもより多く関心を向けてもらいましょう。

 

先ず高血圧治療の大切さについて話しましょう。

 糖尿病があってもなくても血圧管理の重要性は米国NIHが総力をあげて取り組んだスプリント研究で分かります。50歳以上の9,361名の血圧コントロールと心血管疾患発症との関係を平均3.6年見たものです。収縮期血圧140以下を目標としてコントロールした群と比較して120以下を目標としてコントロールした群では心血管疾患発症が僅か3.6年の間に30%も減少しました。この研究は5年を予定してましたが十分差がついたということで途中で中止になりました。さらに長い期間見ていれば更に差が大きくなったでしょう。

最初は糖尿病患者さんにおける高血圧の頻度です。

 北海道の2農村の住民1972名を対象にした研究(端野、壮幣町研究)では、平均年齢50歳の一般集団では高血圧の頻度は40%でしたが糖負荷試験で確認された糖尿病患者では高血圧は62%ありました。また別の健診者での高血圧の発症を5年間調べた日本の報告では、空腹時血糖が126以上の人は100以下の人に比べて2.2倍、HbA1c6.5% 以上の人は6.4以下の人に比べて1.8倍高かったというのがあります。他方外国の報告では、有名な米国フラミンガム研究においては、糖尿病でない人の高血圧の頻度は男女26.4%、27.8%でしたが糖尿病である人では男女47.6%、51.8%でした。これも糖尿病でない人の約2倍ですね。

 糖尿病には高血圧がいかに合併しやすいかが分かるでしょう。

 

では糖尿病と高血圧は合併しやすいのはなぜでしょうか。

 糖尿病・高血圧はそれぞれの遺伝的な因子もありますが、それに加えて肥満・過栄養・運動不足などの環境的な因子が大きく発症に関与することが知られてます。ですから簡単に言ってしまえば共通の環境因子が成因としてあるので当然合併しやすくなるということです。

これらの遺伝的な因子、環境因子の変化はいわゆるメタボリックシンドロームを形成し、インスリンが働きにくくなるという病態を引き起こします。これからは少し難しくなりますがこれが高インスリン血症を引き起こし、交感神経を過度に刺激したり、腎臓からの塩分の吸収を増加させたり、血管の筋肉を増殖させたりして血圧を上昇させる、ということになります。 

 

で糖尿病と高血圧が合併するとどのような影響が出るでしょうか。

 最初申しました様に糖尿病特有の細小血管障害だけでなく、動脈硬化や心臓血管疾患の発生頻度が掛け算的に飛躍的に増加するということです。山田、藤原らのダイアベテスケアに載せた報告があります。それによりますと先ず心臓ですが、糖尿病、高血圧の両方ともない場合の冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の発生率を1とすると、収縮期150以上の高血圧がある場合は3.6倍、糖尿病がある場合は3.7倍ですが、糖尿病・高血圧の両方ともあるとなんと8.4倍にもなってしまいます。2つ足し合わせたよりも大きい数ですね。 脳血管障害(脳梗塞)ではどうでしょうか。糖尿病、高血圧の両方ともない場合の脳血管障害の発生率を1とすると、収縮期150以上の高血圧がある場合は5.0倍、糖尿病がある場合は1.6倍で、糖尿病・高血圧の両方ともあると5.6倍になってしまいます。

              

 腎透析導入リスクを見てみましょう。両方ともない場合の透析導入リスクを1とすると、収縮期150以上の高血圧ある場合は3.0倍、糖尿病がある場合も3.0倍ですが、糖尿病・高血圧の両方ともあるとなんと6.9倍にもなります。驚きですね。

 とかく糖尿病患者さんにおかれては、当然血糖の管理には十分注意を払っておりますが、血圧には必ずしも関心がいかないことがあります。先に話しましたことを頭の片隅に入れられまして糖尿病ケアに努めていただければと思います。 ですがこれらのことは前向きにとらえれば、血糖のコントロールが少し悪くても血圧の方を十分コントロールしていれば合併症の発症頻度はあまり上がらずに済むということです。一般的には血圧のコントロールのほうが易しいですし、インスリンの効きを改善するような血圧降下剤もあるのです。 少しの努力で生きがいのある人生を送っていきましょう。

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME