メニュー

“隠れ心不全”に気をつけましょう

[2020.10.18]

  日本人の死亡原因では、がんに次いで心臓病が多く、心臓病でもっとも多いのが心不全です。高齢化が進む日本には、現在心不全の患者さんは110~120万人いると推定されてます。更にこれからは毎年35万人新たな患者さんが増えていくと予想されてます。まさに心不全パンデミックです。

 心不全とは心臓のポンプ機能が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。特徴的な症状としては、息切れ、動悸、疲れやすさ、足のむくみなどがあります。もしも心不全を発症したら、早期に発見して治療を開始し、心不全の進行をできるだけ抑えることが重要になってきます。 心不全の原因として多いのは心筋梗塞、狭心症、心臓弁膜症、心筋症であるのは当然考えられます。しかし、さらに糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病などがあげられます。

 とくに糖尿病の人で血糖コントロールが良くない状態が長く続くと、心不全を合併する頻度が高まります。糖尿病患者さんにおける心不全発症率は非糖尿病患者さんより2.9倍高く、10万人あたり年1,100~1,200人も発症するとも言われてます。そのため心不全を予防するべく、血糖管理が大切となります。また糖尿病によく併発する高血圧、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病などの管理が重要となります。

 心不全には、「突然、胸が苦しくなる」「突然、胸が痛くなる」といった急性心不全以外に徐々に心臓の機能が衰える「慢性心不全」があり、実は慢性のほうが断然多いのです。慢性心不全の初期の自覚症状としては息切れ、むくみなどがあります。しかし体重増加、食欲不振、腹部膨満感、疲れやすい、低血圧、手足が冷たいなどといった漠然とした症状で始まることもありますので思い当たる場合は主治医と相談してみるとよいでしょう。 少し進行すると、階段や坂道で息切れを感じるようになり、更に進行すると平地を歩いるときにも、さらには安静時にも息切れを起こすようになります。従って息切れが悪化しない段階で、心不全に気付くことが大切です。

 しかしこれからが大切です。実はとても多くの方が、「隠れ心不全」状態にあるということです。糖尿病、高血圧、メタボ、心臓肥大、慢性腎臓病があるということは「隠れ心不全」準備状態あるいは「隠れ心不全」であるということです。 日本心不全学会では無症状の心不全を「隠れ心不全」と呼ぶことにして、心不全の進行具合によって、がんと同じようにAからDまでのステージに分類してます。下の図は、アメリカ心臓学会(AHA))の分類表です。無症状のステージA・Bが「隠れ心不全」に相当しますが、ステージAは「隠れ心不全」準備状態、ステージBはまさしく「隠れ心不全」にあたります。

 

   心不全を早期発見するためには、検査を受けることが欠かせません。まずは心電図や胸部X線を行いますが隠れ心不全では引っかかりません。もちろん症状もありません。そこで登場するのがBNPや心エコーの検査です。BNPは心臓に負担がかかると主に心室から分泌されるホルモンで、心臓の機能が低下して心臓への負担が大きいほど数値が高くでます。簡単な血液検査でBNPの濃度をみることで、心臓への負担の程度を大まかに知ることができるのです。BNPが40pg/mL以下だと隠れ心不全準備状態、40pg/mL以上だと隠れ心不全、100pg/mL以上だと心不全、200pg/mL以上だと治療が必要な状態。ということです。このBNPを見ることでより早期に治療介入が可能となるのです。

 糖尿病患者患者さんは症状がなくても「隠れ心不全」準備状態または「隠れ心不全」ということが多いので是非このBNP検査(NT-proBNPという検査もあります)を受けられてより早期に生活習慣の改善を図りたいものです。この段階では減塩、減量、定期的な有酸素運動、禁煙(これも大切です)といった生活習慣の改善が主たる治療となるからです。また同じ糖尿病薬でもより心臓に良い薬剤を選択することも可能となります。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME