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麦ごはんは如何ですか

[2021.04.18]

 

 昨今の糖尿病患者さんは血糖を気にしましてご飯を制限してしまうことが多いものです。確かにご飯の量が多いと比例して食後血糖は上昇します。そのことをもってしてご飯の量は僅かにするとか、ご飯を抜かすという考えが巷では流行っている感があります。当院の患者さんでもそれを実行しようとしてる方もおりますのも事実です。

 しかし栄養学的に考えますと食事で摂るエネルギー量の50~55%を炭水化物(大部分が糖質)から摂るのがもっとも健康的であることは内外の研究で明らかになっています。炭水化物の摂取量は多過ぎても少な過ぎても、死亡リスクが増加するとの報告もあります(図)。脳は基本的にグルコース(=糖質)がエネルギー源で毎時5g、1日120gのグルコースの供給が必須です。これを満たすにはご飯1食100gとして、その4割が糖質ですので40g、1日3食として120gは摂る必要があります。最低ご飯軽く1杯はとってもらう必要があるということになります。しかし他の臓器も当然グルコースを利用しますので1日最低200gの糖質は必要ということになります。しかしそれでは血糖(正確には食後血糖)が上がってしまうかと心配される方も多いかと思われます。そこでおすすめなのが麦食、玄米食です。

 精製された小麦粉や白米などを食べますと、糖質の量は同じであっても、食物繊維が少ないため吸収が速く、食後の血糖上昇が起こりやすくなります。血糖値をコントロールする必要のある糖尿病の方にとっては勧められるのは全粒穀物(大麦、玄米)です。 米は精白される過程で、外皮、内皮、胚芽など、ビタミンやミネラルを多く含む部分が削りとられます。同時に食物繊維も失われるのです。食物繊維は食後の血糖値の急激な上昇を抑えるのに重要で、糖尿病の方には有益です。

 先ず麦食を考えます。麦は大麦と小麦がありますが食物繊維が多いのは大麦です。 大麦は、米と同じようにうるち性の大麦と、もち性の大麦があって、同じ大麦でも食物繊維はもち性の大麦のほうが多く含まれています。がそこまで細かく気にしなくても良いでしょう。好みで召し上がれば良いでしょう。大麦にはその胚乳部分にβグルカンという可溶性食物繊維が多く含まれ、それが食後血糖値を下げると言われています。大麦の血糖改善効果に関する論文は次のようなものがあります。

正常な糖代謝の健康な人15人を対象に、大麦を50%含む麦ごはんを摂取することによる食後血糖値の改善への影響を、食事負荷試験と連続血糖測定システム(CGM)を用いた論文です。1食あたり500kcalで、白米または大麦を50%含む麦ごはんを用いて、おかずは完全に同じにしました。白米または麦ごはんは1日3回、連続2日間提供され、各試験食における食後180分間の血糖値をみました。その結果、食事負荷の30分後の血糖値と、食後180分間にわたる血中濃度-時間曲線下面積は、大麦を食べたグループで大幅に減少しました(図)。また、連続血糖測定システムによる血糖値の日内変動も、24時間の平均値も大麦摂取グループで有意に減少しました。

         血糖値血中濃度-時間曲線下面積   白米     麦ごはん

 また玄米に関する論文もあります。 日本臨床栄養学会に発表されたものです。白米または発芽玄米を主食にした場合のそれぞれの血糖値およびインスリン値の上昇への影響を調べたところ、発芽玄米を主食とした食事は、白米を主食とした食事に比べ、それらの上昇を抑えることがわかったというものです。精白されてない玄米は、白米に比べ食物繊維、ミネラル、ビタミンB群が多く含まれ、栄養バランスの改善にも寄与すします。

 

 大麦100gに含まれる食物繊維は9.6g。精白米(0.5g)の19倍以上の食物繊維が含まれ、玄米(3.0g)に比べても3倍以上も多いです。主食の「白米」を「麦ごはん」に代えれば、食物繊維をより多くとることができ、糖質が同量であっても血糖の上昇を抑えることが期待されます。 白米を8割、大麦を2割にして炊いても、1食(150g)で食物繊維を2gとることができ、1日3食で6g摂取できます。更に食べやすさのこともありますが、できれば大麦を5割にすれば血糖降下作用が十分に期待されます。

皆様も、糖尿病が有るなしにかかわらず、1食このような全粒穀物(大麦、玄米)を利用してみては如何でしょうか。

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