糖尿病とは?
細胞にブドウ糖をうまく取り込めない病気
膵臓から分泌されるインスリンの分泌が悪かったり働きが低下して、血液中のブドウ糖がうまく細胞にとりこまれず、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が以上に高くなった状態です。
インスリンを作る膵臓のβ細胞が破壊されるために発症する1型糖尿病と肥満、過食、運動不足などが原因で発症する2型糖尿病があります。日本では糖尿病患者さんのほとんどが2型糖尿病です。1型は小児の時期に発症することが多いです。
なぜ糖尿病になるのか
1つには糖尿病になりやすい体質(遺伝的素因)があります。日本人はインスリンの分泌が少ない体質の人が多いです。
もう1つは生活習慣です。食べ過ぎ、肥満、運動不足、ストレス・過労、妊娠などがあるとインスリンの作用が低下(インスリン抵抗性)するためです。
この2つの要因が合わさると2型糖尿病として発症します。
昔の日本人は和食中心の食生活で、体をよく動かしていたため糖尿病になる人はあまりいませんでした。しかし今は食生活が欧米化し、高脂肪、高エネルギーの食品を多く摂取し、一方で身体活動は大きく低下し、日本でも糖尿病の人が増えました。
日本で糖尿病は増えつづけている
2007年度の「国民健康・栄養調査」によればHbA1Cが6%を越え、糖尿病が強く疑われる人は890万人です。また、糖尿病の可能性が否定できない人まで含めると、2210万人にものぼり、日本人全体で考えると、ほぼ、5人に1人が糖尿病であることになります。
しかも、その数は、わずか10年の間に1.6倍も増加しており(1997年と比較)、その増加は、とどまるところをしりません。
どうやって診断するの
血糖値は1日のうちでも変動してます。朝食を食べる前の血液1dL中には60~100mgのブドウ糖が含まれてます。食事をすると30分から1時間ほどして血糖値はピークになります。このため糖尿病の診断基準が作られてます。
この診断基準のなかで血糖値とHbA1c(ヘモグロビンA1c)値が基準を満たせば糖尿病ということになります。
HbA1cは血液中の赤血球にあるヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合で、過去1~2ヶ月の血糖コントロール状況を表します。
ただこの基準を満たさなくてもこれらの値に近い人は十分に注意が必要です。
糖尿病の診断基準
- 早朝空腹時血糖 126 mg/dl 以上
- 食後血糖(おおよそ2時間後)、
- ブドウ糖負荷試験2時間後 200 mg/dl 以上
- HbA1cA1c 6.5 % 以上
グリコヘモグロビン(ヘモグロビンA1c)のできかた
血糖の変動の平均値をみるのに良い
赤血球内の酸素を運ぶヘモグロビンにブドウ糖がくっ付いたものがヘモグロビンA1cです。割合で表され単位は%になります。
どんな自覚症状があるの?
- のどが異常に乾く、 尿量が多くなり回数も頻回となる。
- 全身の倦怠感(疲れやすい)。
- 異常に食欲が出る(糖が利用されない為)。
- 目がかすむ、ぼやける。
- 手足がしびれたり、ピリピリしたりする。
- 性欲の衰え、月経の異常。 などです
ただこれらの症状は相当年月が経って進行してからでないと出てきません。初期には自覚症状はほとんどありません。高血圧と同じようにサイレントキラーです。症状がなくても血液や尿の検診が必要な訳です。
進行すると起こる合併症!
全身の血管や神経に障害がおきてさまざまな合併症を起こします。早期から治療を行えば合併症を防いだり、進行を食い止めることが可能です。
糖尿病の3大合併症といわれるものは網膜症、腎症、神経障害です。これらの詳しい説明は別に致しますが、いわゆる小さな血管の障害によって起こるものです。
動脈硬化も高血糖によっておこります。脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、足の壊疽などを起こします。大きな血管の障害です。
細い血管も太い血管も傷つけてしまうのが糖尿病です。
治療目標は「血糖コントロール」です
血糖を可能な限り正常な値に近づけ、合併症を防ぎ、健康な人と変わらない状態を生涯続けることが目標です。この目標値は下の図に示してありますが、病態、重症度、環境、年齢などによって個別に設定されるべきものです。
可能な限り正常血糖をめざすべきですが、低血糖、臓器障害などのリスクも考慮してオーダーメイドに決められます。
糖尿病治療の三本柱
食事療法と運動療法と薬物療法ですが、基本は先ず食事と運動です
- 食事療法 疲労した膵臓の働きを回復するために食事の量を適切にします。
- 運動療法 ブドウ糖の消費を高めたりインスリンの働きを良くします。肥満の解消に役立ちます。
- 薬物療法 食事療法と運動療法を行っても十分な効果が得られない場合は血糖降下薬やインスリン療法を行います。