メニュー

1型糖尿病

持続血糖モニタリングとは

 血糖管理が必ずしも良くなく、血糖が高い状態が長く続いてしまいますと、糖尿病の合併症が起きてしまいます。これは血液中のブドウ糖が過剰に増えたことで、さまざまな臓器の血管が損傷を受けることによります。目が悪くなる糖尿病網膜症、腎臓が悪くなる糖尿病性腎症、神経が悪くなる糖尿病神経障害の3つが代表的な糖尿病合併症です。これらはみなさんご存じと思います。そしてこの為には過去1~2ヶ月間の血糖値の平均値を示すヘモグロビンA1cを7%未満にしていれば合併症を防げる。これもみなさんご存じこと思います。

 しかし、同じヘモグロビンA1cであっても図のように血糖値が比較的安定している人と著しい高血糖や低血糖を繰り返している人とでは、血糖の変動が強い人のほうがが合併症の発症リスクが高くなることが知られています。つまり、合併症の発症や進行を予防して健康寿命を延ばすには、ヘモグロビンA1cを下げるだけではなく、高血糖や低血糖を避けて血糖値の変動の幅をできるだけ小さくすることが大切となってきます。

 更にヘモグロビンA1cでは患者さんの普段の血糖コントロールの平均状態を知ることができますが、その反面日々の血糖値がどのように変化しているのかまでは把握することができません。たとえヘモグロビンA1cが良くても1日の中で著しい高血糖の時間や低血糖の時間がどうしても出てしまうものです。これが具体的に分からないと、食事にしても薬剤にしても治療の方針が立てにくくなります。特にインスリンの分泌がなくなった1型糖尿病患者さんや血糖コントロールが難しい患者さんでは、日々の生活のなかで血糖値がどのように変化しているのかを把握し、適切の対応していくことがとても困難になります。

 そんな中で持続的に血糖値を測定して血糖の変動を見えるようにするための機器として開発されたのが、持続グルコースモニタリングシステムです。これらの機器を用いて、図のように血糖値の変化を点ではなく線で捉えることで、血糖の自己測定だけでは気付きにくかった食後の高血糖や夜間の低血糖に対処できるようになります。血糖コントロールの改善に役立つものです。

フリースタイルリブレ

 数ある持続グルコースモニタリングシステムのなかでもフリースタイルリブレ(略してリブレと言います)が巷で多く利用されています。これは皮下に入れたセンサーで皮下と脂肪の間の間質液中の糖濃度(図)を連続的に測定し、専用のリーダーであるいは自分のスマホでスキャンして読み取るものです(図)。これにより1日中に渡って糖濃度即ち血糖を知ることができるのです。

           

 血糖の上下動などをリアルタイムに見ることが出来、血糖自己測定だけでは発見しにくい夜間や早朝の低血糖、食後の高血糖を見つけることが出来ます。日本ではインスリン治療を受けている方は健康保険が使えます。特に1型糖尿病の方、血糖管理が難しい2型糖尿病の方に多く使われています。

                  

 しかし、血糖変動を継続的にモニタリングすることが出来ることで、自分の状態をより深く理解し、糖尿病の管理につなげることが出来ますのでどなたにも適します。例えばどの様な食事で血糖が上がりやすいか、上りにくいか、どのような間食でより血糖が上がるかが手を取るように分かります。また食後に運動をすると血糖の上りが抑えられるとか、運動中の低血糖をモニターすることが出来ます。ですから自費にはなりますが、軽症の方も中等症の方もリブレを使ってより良い血糖コントロールを心掛けてる方が増えてるのは事実です。

 血糖変動を継続的にモニタリングすることで、自分の状態をより深く理解し、糖尿病の管理につなげることができるようになります。今後、これらによって糖尿病のより良い管理ならびに糖尿病合併症のリスク軽減につながることを期待したいものです。

Dexcom G6 システム

Dexcom G6 は長期にわたる経時的な高精度を特長としています。

リアルタイムに測定された血糖値は、5 分ごとに患者さんのスマホまたはモニターに自動的に送信されます。

定期的な血糖自己測定をしなくても、Dexcom G6 CGMシステムで24時間にわたって血糖自己管理ができるようになりました。

緊急低値リスク アラートがあり、低血糖 (55 mg/dL 以下) の前に患者さんに警告します。また設定した血糖値を超えても警報を出してくれという優れものです。

 

インスリンポンプ療法とは

インスリンポンプとは、「皮下に、持続的に、インスリンを注入することができる小型携帯ポンプ」のことです。

2~3日に1回針を刺すだけで、簡単なボタン操作でインスリンの注入量や注入タイミングを調整でき、人目を気にせずに注入できます。インスリンポンプを使用することで、個人の生活スタイルに合わせてインスリン量や注入方法を、細やかにまた速やかに調整することが可能となり、食事や仕事、運動など毎日の生活を自由に楽しむことができるようになります。

インスリンポンプは携帯電話や携帯音楽プレイヤーほどの大きさで、皮下に刺されたカニューレという柔らかく細いチューブからインスリンが注入されます。状態に合わせて必要なインスリン量を少量ずつ注入することができます。

食事や運動など、急に予定が変更になっても、途中でインスリンの注入を止めたり量を増減したりすることが可能です。

インスリンポンプとインスリン頻回注射との違いは

これを理解するためには膵臓のβ細胞から分泌されるインスリン分泌形態を知っておく必要があります。

インスリン分泌形には①基礎分泌と➁追加分泌の2つがあります。 基礎分泌は食事をとらなくても生命活動を維持していくためのインスリン分泌でほぼ一定の割合で分泌されています。追加分泌は食事の際に分泌されるもので食後の血糖上昇を抑えています。

インスリン頻回注射は1日数回皮下注射をするものです。

食事の直前に打って追加分泌を補う速攻型、超速攻型インスリンと1日1回打って基礎分泌を補う持効型インスリンを組み合わせて使用します。

速攻型、超速攻型インスリンは食事の時だけに作用するインスリンで3,4時間でその作用は切れてしまいます。追加分泌を補うインスリンです。

持効型インスリンは24時間作用し基礎分泌を補うインスリンです。

インスリンポンプで使用するインスリン製剤は、1種類のみです。一般には、超速効型インスリンを使用します。これはインスリン注射で使用する超速効型と全く同じものです。この1種類のインスリンで、追加分泌も、基礎分泌も補うのです。皮下に留置した細く柔らかいチューブを通して持続的に注入します。

インスリンポンプのメリットは

簡単なボタン操作で人目を気にせずインスリン注入することができます。

①針を刺す回数は2,3日に1回で済みます。

②明け方インスリン必要量が増えるときは自動的に増やすとか夕方は減らすとかいう設定ができます。より生理的なインスリン分泌に近いパターンを維持できます。

③脂ものが多い食事とか長めの時間をかけて食事をとるといった場合に対応した追加インスリンの注入方法を選ぶことができます。

④ボタン1つでちょこちょこと補正するためのインスリンを打つことが得きます。

⑤ポンプに連動する持続血糖モニターを装着すれば、低血糖になる前に、インスリン注入が自動的に中断する機能があります。

⑥また高血糖時や、血糖が急激に上がった時にも知らせてくれますのでので、早めの対処が可能です。

 

インスリンポンプのデメリットは

①インスリンポンプにより医療費が増えることです。

インスリン治療にかかる1ヶ月あたりの医療費の自己負担額について、大まかな目安は

 

ペン型インスリンの場合

   在宅自己注射指導管理料    7500円

   血糖自己測定器加算 120回(1日4回測定) 14900円   

   合計     22400円   3割負担で6720円  

   調剤薬局  3割負担  3474円

   3割負担の総合計  6720+3474=10194円

 

インスリンポンプの場合

   在宅自己注射指導管理料    12300円

   血糖自己測定器加算 120回(1日4回測定) 14900円

   間欠注入シリンジポンプ可算   25000円

   合計     52200円   3割負担で15660円  

   調剤薬局  3割負担  1662円

   3割負担の総合計  15600+1662=17322円

 

ポンプ+リブレの場合

   在宅自己注射指導管理料    12300円

   血糖自己測定器加算 120回(1日4回測定) 14900円

   間欠注入シリンジポンプ可算   25000円

   持続血糖測定器加算

   CGMセンサー

   合計     52200円   3割負担で15660円  

   調剤薬局  3割負担  1662円

   3割負担の総合計  15600+1662=17322円

 

SAP(持続血糖測定器を使用)の場合

   在宅自己注射指導管理料    12300円

   血糖自己測定器加算 120回(1日4回測定) 14900円

   持続血糖測定器加算        32300円

   CGMセンサー(2個以下)     13200円

   合計     72700円   3割負担で21810円 

   調剤薬局  3割負担  1622円

   3割負担の総合計  21810+1662=23472円

以上の様に、ペン型インスリン注射から、インスリンポンプに変更することにより、3割負担の方では実質7000円程度の負担増にはなります。 

SAP療法では、更に最低6000円程度高くなります。

 

②ポンプ刺入部位のかぶれ

刺入部位がかぶれてしまうことはあります。しかし回避したり、軽減する方法はあります。

③ポンプのチューブが閉塞してしまうことがあります。

これはポンプを使用していく上では最も大事なことです。

しかしこれは随時の血糖測定と緊急時の対応方法を知っていれば対処できるものです。

 

 

 

どの様なインスリンポンプがあるのでしょうか

 

ミニメド640Gシステム

    

持続的に血糖変動をモニターして,血糖値が下限値に達したり、近づくと予測されると自動的にインスリン注入が中断され,血糖値の回復が確認されるとインスリン注入を再開します。低血糖や高血糖に至る前に警告(音やバイブレーション)を発信する機能も備えています。

 

メディセーフウィズ

これには3つの長所があります。

①最大の長所はチューブがないことです。

チューブが引っかかることがないので、装着中のストレスが少ないポンプです。服の中に納まります。

②インスリンの設定や注入は、リモコン操作で全てできます。

リモコンは手のひらの大きさで、画面操作も簡単になっています。

③ポンプ装着手技も比較的簡単になっています。

 

ミニメド770Gシステム

持続血糖測定器と連動する最新型インスリンポンプで基礎インスリンを自動的に調整してくれるものです。

測定した血糖値に基づいて、日中も夜間帯も24時間血糖値を目標範囲内に保つためにシステムが自動的にインスリン量を調整してくれます。

追加インスリン注入が簡単にできます。

簡単なボタン操作で食事に必要なインスリンを追加することができます。食前の血糖値を入力し、見積もった糖質量を入力することで、システムが必要なインスリン量を見積ります。

 

どの様な人にポンプが勧められるか

器械を使った治療であるため、十分な教育を受けたうえで、器械を自分で操作出来ることが何よりもたいせつです。ポンプ療法では、インスリン頻回注射法よりも低血糖が減り、血糖値が安定化することが期待されるため、現在の治療では血糖値が不安定な方や、妊娠中の糖尿病患者などに特に勧められます。

 

 

カーボカウントのお話

 1 型糖尿病の方でもインスリンを使っている2 型糖尿病の方でもざっくりと糖質を見積もれる様になりますと食事の自由度が増し、それに合わせたインスリンによるコントロールが改善するものです。

 糖尿病の食事療法は通常炭水化物、蛋白、脂質の摂取バランスの良い適正なエネルギーを決めてそれに従って食べる量を調節するのが日本においては一般的です。しかしここで紹介するカーボカウントとは、糖質量を把握して血糖コントロールに役立てる方法です。食物の中で最も急激な血糖上昇を来すのが炭水化物ですので、食事中の炭水化物量を計算して糖尿病の食事管理に利用します。1型糖尿病患者でも2型糖尿病患者においても利用可能な方法で、欧米では一般的に利用されています。

 カーボは英語のカーボハイドレートからきています。そのまま訳すと「炭水化物」ですが炭水化物のなかにある食物繊維は約5%と少ないため、残り95%の「糖質」と「炭水化物」をほぼ同等とみなしても良いでしょう。

 栄養素のなかで、もっとも血糖値に影響を与えるのは糖質です。たんぱく質や脂肪も血糖値を上げますが、糖質に比べて上昇速度は遅く、上昇幅も小さいです。特に1型の人は糖質に主に注目して、その量と血糖値から食前のインスリン量を決定することでかなり自由な食生活が可能となります。

 しかしこの糖質量を見積もるのが比較的困難なためカーボカウントを実行している人は少ないのが現状です。ここでは最小限の知識で糖質量、カーボを見積もる方法を紹介してみたいと思います。ざっくりとカーボを見積もるのがコツです。ざっくりカーボカウントです。ここでは糖質10gを1カーボと表示します。

主食

先ず主食(ごはん、パン、麺類)のカーボはきちんと把握しましょう。

ごはん
  • ご飯100gで3.5カーボ
      150gで5.5カーボ
    • コンビニおにぎりは大体4カーボ
    • 寿司は1貫約1カーボ
    • カレールーは重量の1/10がカーボ(200gのルーで2カーボ)
    • 丼物 10~12カーボ
    • ちらし寿司 12カーボ
    •        
パン
  • 食パン6枚切り1枚で3カーボ、パンは重量の半分が糖質です
    • ロールパン1.5カーボ 
    • コッペパン2 カーボ
    • サンドイッチ1切れ1カーボ
  • 菓子パンはカーボが多い 6~7カーボ
麺類
  • ゆでうどん1玉200gで6カーボ
  • 中華麺  1玉200gで6カーボ
  •        

おかず

次はおかずです。おかずは多種多様で見積もることが難しくおもわれますが、イモ類が入っていなければ大体2カーボと覚えて下さい。

更に細かくは次の様にざっくり見積もればOKです。

親指と人差し指でOKサインを作り、その大きさのじゃがいもや里芋、かぼちゃは0.5カーボ、さつまいもはいも類のなかでも糖質が多く倍の1カーボで見積もります。

肉、魚、卵

肉、魚、卵は0カーボ(たんぱく質)です。

揚げ物

揚げ物の衣は小麦粉を使ってますので、手のひらの半分程度にのるサイズは0.5カーボ、手のひらにしっかりのるサイズは1カーボと見積もります。

調味料

  • 小皿料理は5g
  • 大皿料理は1カーボ

果物

  • みかん1個で1カーボ
  • 柿1個、バナナ1本で2.5カーボ
  • リンゴ1個3.5カーボ

みかん1個分の大きさの果物は約1カーボとざっくり覚えましょう。

飲み物

  • ジュースは100mlで1カーボ
  • スポーツドリンク、牛乳は200mlで1カーボ

アルコール

  • ビール 350ml 1カーボ
  • 日本酒 1合  1カーボ
  • ワイン、ウイスキーは0カーボです。

その他

パックになった市販食品、お菓子類はその成分表示を確認しましょう。エネルギー407kcal、糖質48gとか出ているはずです。

栄養量が記載されてない総菜や外食では、大きい皿は1カーボ、小鉢は0.5カーボと見積る方法もあります。

 

如何でしょうか、これだけあれば大体は計算できるかと思います。先ずは主食をしっかり押さえて、おかずは知っている範囲で見積もっていくのがコツです。1型の方はカーボの考えかたは特に有用です。すぐにできなくても徐々に練習していくと良いでしょう。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME