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世界糖尿病デーってご存じですか

[2022.12.04]

 世界糖尿病デーは、国際糖尿連合(IDF)と世界保健機関(WHO)が1991年に、増加する糖尿病の脅威に対応するために創設したものでして、毎年11月14日と定められてます。2006年に公式な国際連合の日として認定され、世界各地でブルーライトアップなどのイベントが実施されています。山梨県でも武田信玄公像がその日キャンペンカラーの青色にライトアップにされました。

 1114日とは、1922年にチャールズベストとともにインスリンを発見したバンティングの誕生日にあたります。インスリンの発見により、糖尿病治療は飛躍的な進歩をとげたのはご存じの通りです。特に2021年はインスリン発見から100年目の記念すべき年で多くの行事が行われました。

世界糖尿病デーのシンボルは「ブルーサークル」です。世界的に増え続ける糖尿病に対する意識を高め、一致団結して対策していく必要性を呼びかけるため掲げられるシンボルマークです。

 日本では日本糖尿病学会と日本糖尿病協会で組織する世界糖尿病デーが開催され、今年の世界糖尿病デーのテーマとして「偏見にNO!糖尿病をもつ人はあなたと同じ社会で活躍できる人です」を掲げました。その背景には、糖尿病を理由に就職や結婚、生命保険の加入などで不利益を被るとか、偏見を恐れて糖尿病であることを隠したり治療を中断してしまうとか、医療者が糖尿病のある人を厳しい言葉でとがめるとか、こういったことが蔓延している現実があるからです。これらのことは特定の集団にレッテル貼りをしてしまうという偏見から起こる現象です。この偏見をスティグマと言い、直訳すると烙印とか汚名という意味です。

 高齢社会の中で、多くの人がさまざまな病気に罹患しています。糖尿病が特別ではないということは強調されるべきです。高血圧や脂質異常症は適正な薬物療法を行えば、日常生活に大きな制限はなく、「恐ろしい病気」などというレッテルを貼られることはありません。

 食事だけをみても、一日のエネルギー必要量は糖尿病の人でもそうでない人でも変わりありません。間食を避けるなど幾つかの注意点を守れば、糖尿病のある人もない人と同じように、普通の食事が摂れるものです。 本人のせいで恐ろしい病気に罹ってしまったかのような見方は誤りであり、スティグマです。

 恐ろしい病気でない事示す幾つかの研究があります。例えば朝日生命成人病研究所のグループの研究によりますと、糖尿病のある人の40歳時における平均余命は男性で39.2年、女性で43.6年と推計され、厚生労働省が示す一般の人(順に39.0歳、45.5歳)とまったく同程度でした。このことから、少なくとも血糖コントロールが比較的良好な糖尿病のある人で寿命が短いということはないと考えられます。他からもこう言ったデータは出ています。 それは、薬物療法や血糖管理法の進歩により、血管合併症が仰制できるようになった為と言えます。

スティグマにもいろいろあります。

 生命保険や住宅ローンの契約を断られる、就職や昇進で不利な扱いを受ける、職場や学校で差別的な扱いを受ける、等々。これらは社会的なスティグマと言えるでしょう。社会がレッテル貼りをしてしまうことです。

 一方、社会的スティグマを恐れるあまり社会生活を自ら狭めてしまう、いわば自己スティグマを引き起こしてしまうことも問題です。自分が糖尿病だと周囲に言えず、そのために治療機会を逃して、血糖が悪化してしまうケースもあります。

 血糖コントロールがうまくいかないことが新型コロナ感染症の重症化の危険因子の1つではありますが、しかし、糖尿病のある人が一般の人に比べて新型コロナウイルスに感染しやすいということはありません。糖尿病患者さんがコロナに罹り易いと言うのも1つのスティグマです

 さらに、医療者が知らず知らずのうちに行ってしまうスティグマもあります。指示した生活習慣の是正や治療が実行されなかったために、患者さんをとがめるような場合です。

言葉にも問題があります。

 日本糖尿病協会では、プロジェクトの一環として、糖尿病のある人を対象に糖尿病の病名に関するアンケートを実施しました。

「糖尿病」という病名に対してどう思うかを聞いたところ、不愉快である、とても抵抗がある、抵抗がある、少し気になるが合わせて9割に上り、糖尿病のある人の9割がなんらかの抵抗感・不快感を抱いていることが分かりました。「何とも思わない」は1割にすぎませんでした。

スティグマを生む原因に言葉にも問題があります。

 学会でも「糖尿病」の代わりに「高血糖症」「インスリン作用不全症」「ダイアベティス」などにしようという案が出ています。遠からず新しい名称が発表されるでしょう。

 「生活習慣病」という名前にも問題があります。確かに生活習慣は糖尿病の一因ではあって、その是正を呼びかけることは重要です。しかし、糖尿病のある人が生活習慣にだらしないわけではありません。

 日常使う言葉にしても、患者さん向けに使ってもよい言葉と避けるべき言葉があります。避けるべき言葉としましては「糖尿」「糖尿病患者」「療養」などがあります。あまり良い感じはしませんですね。それぞれ「糖尿病」「糖尿病のある人」「治療、医療など」などと言い換えることが提案されてます。

 

 世界糖尿病デーの取り組みは、こうしたスティグマに対する啓発、啓蒙運動としておこなわれたものでした。私どもも、患者さん自身も意識してスチィグマのない社会の実現を目指して行きたいものです。

 

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