メニュー

SGLT2阻害薬 安全に使ってその有効性を最大限維持させましょう

[2024.04.02]

今日は、この薬を安全に使用してその有効性を維持させるこつを考えてみましょう。

 SGLT 2阻害薬は、日本では2014年から使われるようになった比較的新しい糖尿病の治療薬です。商品名でジャディアンス、フォシーガ、スーグラ、カナグル、ルセフィ、デベルザがあり更にそれらの配合剤があります。

SLGT2阻害薬はSGLT2(尿糖を吸収する輸送体)のはたらきを不活化させ、腎臓の尿細管というところでの糖の再吸収を抑制するお薬です。これにより、余っている糖を尿へ排泄することで、空腹時や食後の高血糖を抑えるのです。

世界的な大規模な臨床試験で血糖降下作用のみならず、心不全や腎臓病の予防や治療薬としての効果があるとして近年使用頻度が大きく増加してる薬です。

心不全や腎臓病の発症や進展のリスクを30~40%ほど抑える報告がこのクラスの各薬剤で出ておりまして、糖尿病のみならず慢性腎臓病の方、心不全およびその予備軍の方にも広く使われ、実際その効果を上げています。

直接尿に糖を排泄すること以外に、インスリンの分泌能を改善しインスリンの効き具合も良くして血糖を更に下げていきます。また血圧を下げるとか、尿酸値を下げたり、脂肪肝を改善するといった多彩な良い効果が知られてます。それに更に心不全や腎症予防および進行抑止効果があるとなれば広く使われてきたのは当然のことと言えます。

SGLT2阻害薬は血糖降下作用に限らず,体重減少効果,血圧低下,脂質改善などが期待されてますが、これらの有効性を発揮させ、かつ安全性を担保するためには、糖尿病治療の基本となる食事療法を守ることと、食事に関連して想定される注意点があります。今回はそれについて説明してみましょう。

  先ずこの薬の特徴は低血糖を起こし難いということです。健常人においても低血糖は報告されておりませんし、糖尿病の方においても単独投与による低血糖の頻度は対照の方と変わらないとされてます。その意味でも安全性の高い薬と言えます。しかし、SU薬(アマリール、グリミクロン)とかグリニド薬(スターシス、グルファスト、シュアポスト)のようなインスリンを分泌させる薬、インスリンそのものを使用してる場合は低血糖を起こす可能性はありますので注意が必要です。

この薬の内服によって体重減少が大概は起こります。しかし体重減少効果の反動で食欲が亢進してしまってカロリー摂取が過剰になってしまうケースもしばしばみられます。また糖を排泄してるという安心感から食事療法への意識が低下してしまうということもあります。ここは注意が必要です。

適切な水分補給を怠りなく。

 尿中に糖とそれ以外にナトリウムも排泄されるために浸透圧が上昇し水を引っ張り、尿量が増大します。SGLT2阻害薬を内服するとどうしても頻尿、多尿になる傾向があります。1日当たりの尿量が400~500mL程度増加すると言われています。この程度は人によってかなり異なりますがご職業によっては(トイレに行きづらい環境下でのお仕事など)使用しづらいかもしれません。その時の都合に合わせて一時休薬すると良いでしょう。

この浸透圧利尿によって、体液量の減少をきたし血圧が下がることで、立ちくらみを誘発する可能性があります。平素よりこまめの水分摂取を心がけ以前よりは500mlほど多く水分を摂りましょう。喉が渇いたらすぐ水分を摂りましょう。水以外ではカフェインが含まれない麦茶、ほうじ茶がお勧めです。アルコールは脱水作用があるため特に注意が必要です。多飲酒するときは(しない方が良いですが)休薬しましょう。また夏場の良く汗をかく時期は特に脱水に注意が必要です。利尿薬の併用時や、腎機能低下が認められる高齢者では、更に注意が必要です(これは医療者側が特に注意しなければいけませんが)。

      

 

 糖尿病を持っておられる患者さんでは、そうでない人と比べて膀胱炎とか腎盂炎といった尿路感染症の発症が60%程度増えると言われてます。また、女性、60歳以上の高齢者に多く発症します。

SGLT2阻害薬の作用機序からすると、尿路感染症の発症や重篤化することが考えられますが、市販前および市販後の安全性解析やDPP-4阻害薬を対照とした民間医療データベースの結果からは、特に尿路感染症の増加は認められていません。しかしそもそも糖尿病はある分けですから注意は必要です。

膀胱炎がなくても膀胱、尿道の刺激症状が出ることがあります。その場合は男性ならとりあえず一時休薬して落ち着いてから再度飲み始めてみると良いでしょう。女性ですと膀胱炎かどうか診てもらって対処を決めると良いでしょう。

しかし、SGLT2阻害薬を内服している方では、尿路感染症よりも性器真菌感染症のほうが多く、罹患のしやすさは飲んでない方と比べて5倍と報告されています。

外陰部の清潔を心掛けるとともに、尿が濃くならないように水分摂取を心掛けることが大切となります。性器真菌感染症の治療としては、フルコナゾールなどの経口抗真菌薬か、ミコナゾールなどの抗真菌薬の外用剤(クリーム剤)を使うとされています。

 

糖質の摂取を制限しすぎないように

 糖尿病性ケトアシドーシスって聞いたことがありますか? アシドーシスは酸血症のこと。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは、最低限必要なインスリン量が不足して、肝臓や筋肉などの組織が糖を取り込んでエネルギーに変えることができなくなった場合に生じます。組織に取り込まれなかった糖が血液中に貯留していくため血糖値は上昇しますし、糖の代わりのエネルギー源として脂肪が代謝されることにより、酸性の代謝産物であるますケトン体が大量に生じます。頻尿・多尿や、喉の渇きといった高血糖症状のほか、アシドーシス(酸血症)の症状として吐き気や嘔吐、腹痛などの消化器症状がみられます。重篤になると意識障害を生じ、生命にかかわります。

SGLT2阻害薬によるDKAの場合は血糖値の上昇が顕著でなく、従来みられるDKAより低い200~250mg/dL程度の血糖値でもおこりうるため、正常血糖DKAとよばれます。ここがポイントです。血糖がそれほど高くないのでDKAの診断がおくれてしまうことがありからです。

DKAは本来インスリン分泌がほとんど無くなる1型糖尿病で発症しやすいのですが、SGLT2阻害薬を使用している場合には2型糖尿病でも発症します。また糖尿病のある方が食事中の炭水化物比率を40%以下に制限すると、この酸性物質ケトン体が有意に上昇することが分ってます。(炭水化物と糖質はほぼ同じと考えてよいです。)

SGLT2阻害薬を内服してる方は過度な糖質制限は是非控えましょう。主食として1食ご飯なら半善(55g)、食パンなら8枚切り1枚、うどんなら半玉(100g)、これでも少ないですが、これだけは最低限摂りましょう。

また、シックデイや手術によってインスリンの効きが悪くなったときや飲酒量の増加で食事量が減ったとき、体内のインスリン量が減ったとき(インスリンを分泌出来なくなった方がインスリン注射を打ち損ねた場合、膵炎などによりインスリン分泌量が足りなくなった場合)に発症しやすいです。

近年は糖質制限食と言って極端に糖質を減らす方が増えております。決して過度の糖質制限とSGLT2阻害薬を重ねないで下さい。そもそも糖質制限食は長期に続けると死亡率を上げます。健康に良くないです。

 

最後にシックデイへの対応を知っておきましょう。

 糖尿病ある方が感染症や消化器症状などの急性疾患によって発熱・嘔吐・下痢・食欲不振などを起こし、食事がとれてない状況を「シックデイ」と言います。シックデイの状態においては、脱水になりやすく、重篤になるとケトアシドーシスを起こす危険性があるため、それを回避するためにSGLT2阻害薬の服用を中止します。

シックデイ症状がみられた場合、摂取できた食事の量にかかわらず服用を中止するということが大切です。また、シックデイ時には、脱水を予防するために十分な水分摂取をすすめます。食事ができそうならば、消化のよい食材を選んで少しでも摂取しましょう。

 SGLT2阻害薬を内服されてる方は、糖尿病を持っていても、持っていなくても、これらことを頭の片隅に入れつつ、快適な食生活、日常活動に励んでいただければ幸いです。-

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME