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体重をマネジメントするコツ

[2023.12.25]

 食生活が豊かになるにつれ、日本においても肥満から糖尿病になる割合が増え、それによって動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中など深刻な病気の発症率が高まります。しかし、自身では分かっていても過食や運動不足といった生活習慣はなかなか改善しにくいものです。そこで今回は、【体重をマネジメントするコツ】についてお話したいと思います。

 

体重をマネジメントの基本ポイント

1 減量目標を理解しよう!

 肥満診療ガイドラインでは肥満(BMI25~35)の方の減量目標は、3~6か月で現体重の3%としています。BMI35以上の高度肥満症の方は、現体重の5~10%が減量目標となります。

 そのため、短期的な目標としては3ヶ月で体重マイナス3㎏、ウエストマイナス3㎝を目指します。急激な減量はリバウンドしやすいので、生活習慣や食習慣を無理なく改善し、ゆっくりと確実に体重を落とすことが体重マネジメントのポイントです。3㎏の体重減少でも内臓脂肪は確実に減少し、血糖値・脂質代謝が改善します。

 

2 食生活を見直してみましょう

①食べ過ぎなければ太らない

 太る原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ること、つまり食べ過ぎです。当たり前のことですが、余分なエネルギー摂取量を控えることが減量への1番の近道です。

②まずは間食をやめること

 クッキーやおせんべいなどの間食や、食後にアイスクリームやプリンなどを気軽に食べがちですが、これが落とし穴です。食生活の見直しは、まず間食をやめることから始まります。例えば、プリン1個(約240㎉)を食べた場合、これを消費しようとすると、散歩を1時間半しなければなりません。よって間食しないことが大切であり、また間食で食べるもののエネルギー量を知っておくことも重要です。

③よくかんでゆっくり食べる

 食べる量を減らすだけでは空腹の反動でさらなる過食を招く可能性があります。そこで、まずは「10回以上よく噛んで食べる」ことを心がけましょう。よく噛むと、「ヒスタミン」という食欲を抑えるホルモンが脳内で増え、同じ食事でもより満腹感を感じられます。

④早食いは食べ過ぎを招く

 食事をすると、レプチンというホルモンが満腹中枢に働きかけ、食欲を抑えます。このレプチンは食事を始めてから20分ほど時間が経たないと働きかけません。レプチンが働きかけるまでは満腹感が得られず、どんどん食べてしまうことになります。よく噛んでゆっくり食べれば、食べ過ぎることなく食欲を抑えることができます。

 

3 体重マネジメントのカギ

 ・自分を客観視できるダイエットノート(食事・体重記録表)をつける

 ・できるだけ身体を動かす、スキマ運動を心がける。

 ・競い合いながら減量をしても可。仲間と情報交換をする。

 ・見た目も大事。毎日鏡で全身をチェックする。

特に、実際に自分がどれだけ食べ過ぎているのかを客観的に知る方法としてお勧めなのが、食事内容や体重を記録することです。日々の食事や体重の変化を記録していくことで、食行動の〝くせ〟や改善点、目標を明らかにするといいでしょう。改善の効果を目で見ることができればやる気アップにも繋がります。

 

4 〝食事〟による体重マネジメントのコツ

①適正量と栄養バランスを覚えよう

 適正なエネルギー量の範囲内で、バランスよく栄養を摂ることができる食事が理想です。適正なエネルギー量は、年齢や性別、活動量によって変わりますが、女性は約1400~1800㎉、男性は約1600~2000㎉です。

  • エネルギー量の調節は主食で

  エネルギーを摂りすぎないようにするには、主食の糖質や主菜の脂肪の量をコントロールするのが有効です。特に女性や小柄な男性は、主食の量を調整することを意識しましょう。

  • それぞれの栄養素について意識しよう
栄養素 ポイント
エネルギー 標準体重(㎏)×25~30㎉が1日に必要なエネルギーの目安。多めに摂ってしまったら翌日は控えめにして1週間ごとに調整しましょう。
たんぱく質 身体を作る元となる大切な栄養素です。脂肪の少ない肉や魚、卵などの動物性たんぱく質の他、豆や大豆製品など植物性たんぱく質もバランスよく摂りましょう。1日の目安は体重1㎏あたり1~1.2gです。
脂質 1gが9㎉と高エネルギー。脂溶性ビタミンの吸収率を上げるなどの役割もありますが、減量中は摂取を控えましょう。できるだけ1日の摂取エネルギーの25%以下にしましょう。(脂身を控え、調理での油も大さじ1~2杯程度)
炭水化物 ご飯やパン、麺類の主成分。身体を動かすエネルギーになりますが、摂りすぎると脂肪として貯蔵されます。1日の摂取エネルギーの50~60%まで(毎食の米飯100~150g程度)が目安です。
食塩 食塩が多く味の濃い食事は、血圧を上げるだけでなく、ご飯の食べ過ぎを招きます。1日6g未満を目標にします。だしの旨味や酸味、スパイスなどを利用するといいでしょう。
コレステロール 細胞膜の成分やホルモンの原料となるコレステロールも、摂りすぎると動脈硬化を招きやすくなります。肉類などの動物性脂肪の摂りすぎに注意しましょう。
食物繊維 満腹感を得やすくするほか、便秘を予防・解消し、食後の血糖値やコレステロール値も低下させるなど大切な役割を果たします。1日20~25g摂ることを目標にしましょう。野菜やきのこ、海藻類、こんにゃく類です。

健康を維持しながら体重をマネジメントする上で、バランスよく栄養素を取り入れることが重要です。

  • メタボ型の方

糖尿病患者さんにおける食事のポイントは「血糖値を急激に上げないこと」、「上がった状態を維持しないこと」の2つです。

メタボ型の糖尿病患者さんは特に夕食の食べ過ぎに注意し、夕食だけに偏らず3食きちんとバランスよく食べるように心がけましょう。スイーツやラーメン+チャーハンなど「主食+油」の組み合わせを食べ過ぎないようにすることも大切です。

 

②適正量を目で見て覚えよう

 手ばかりを覚えておく

適正なエネルギー量の食事を作るために、食材の大体の量を見て分かるようにしておくと、いちいち計量器を取り出さなくても済みます。自分の手の大きさを利用して〝手ばかり〟を覚えておきましょう。

③食べ方にもコツがあります

 同じ量の食事を摂るにしても、脂肪がつきにくくする食べ方のチョットしたコツがあります。この食べ方を覚えておくと、少しずつでも摂取エネルギーを減らせます。

  • 食べる順番が重要

副菜→主菜→主食の順番で!

急激な血糖値の上昇は、過剰なインスリンの分泌に繋がります。インスリンは余分なエネルギーを脂肪に変える働きがあります。サラダや和え物などの野菜の副菜を先に食べることがお勧めです。野菜に含まれる水溶性の食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。まず、野菜をしっかり噛んで食べることで満足感も得られやすくなります。

  • 夜遅くに食べない

 夜、遅い時間に食事をとると、その摂取エネルギーが消費されにくく、脂肪がつきやすくなってしまいます。そのうえ、生活リズムが乱れ食事に偏りが出てしまいます。どうしても遅くなってしまうときは、低脂肪で消化のいいたんぱく質と野菜を中心に少し食べる程度にしましょう。

 

5 〝運動〟による体重マネジメントのコツ

 運動と言っても、散歩など軽く身体を動かすだけでも十分有効的です。日常生活の中でできることから始めましょう。食事を見直し、そのうえで身体も動かせば、より確実に体重マネジメントが達成できます。

①手軽な運動で「痩せる力」をアップ

 身体を動かしてエネルギーを消費すれば、体重減少、内臓脂肪減少などの効果が得られます。同時に体力もつくので日常生活を送ることが楽になります。運動の継続は、効きにくくなっているインスリンの働きを良くし、血糖コントロールの改善にも繋がります。

②歩数計を活用しよう

 毎日どれくらい運動できているか知る目安として、歩数計を活用しましょう。雨の日にずっと家にいると2000歩も行きません。毎日、歩数計で測り記録をしておけば、どの程度運動不足かもセルフチェックできます。起床時から就寝時まで歩数計を身に着け、記録していきましょう。脚や膝に痛みがないなどの問題がなければ、まずは1日7000歩以上を目指しましょう。

③サルコペニア予防

 「サルコペニア」とは、「骨格筋量の減少と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」のことをいいます。糖尿病患者さんは、サルコペニアの頻度が高いと言われており、またサルコペニアになると、さらに糖代謝が悪くなります。日々の運動を行うことで足腰の筋力が鍛えられ、サルコペニアや老化予防に繋がります。

④効率のいい身体の動かし方「NEAT」を増やそう!

 体重マネジメントでは、ちょっとしたことを無理なく続けることが大切で、「ストレスなく、効率よく」が継続するポイントです。そのためのコツを2つ紹介します。

  • エネルギー消費量を増加させる

 1日に消費するエネルギー量は、心拍や呼吸、体温維持などに必要な基礎代謝量、食後の体温上昇により消費される食事誘発性熱産生、そして身体活動によって消費される身体活動量の3つに分けられます。基礎代謝量と熱産生(食事誘発性)は、年齢や体格、性別によってほぼ決まってしまいます。したがってエネルギー消費量を増加させるには、身体活動量を増やすのが最も確実な方法になります。

  • 運動を始める前に、まず「NEAT」を増やそう

 身体活動量に含まれるNEATと呼ばれるものが注目されています。NEATとは、運動とは言えないような日常的な身体活動量のことを指し、成人のエネルギー消費量にはNEATの影響が強いとの結果が得られています。

 太っている人ほど座っている時間が長く、立ったり歩いたりする割合が少ない傾向にあるとのデータがあります。立っているだけで、座っているときよりもエネルギー消費量は約20%も増加します。この違いは、1日で約350㎉(=ご飯約2杯分)にもなります。それが1年間蓄積されると体脂肪量にして約18㎏もの差が生じます。

 現代人は階段を使わずにエスカレーターを使ってしまうなど、NEATがどんどん減っていきます。さらに携帯電話やリモコン類に囲まれ、座りながら用が足せるようになってきました。意識的に立ち上がり、そしてまずは動くということから始めてNEATを増やし、ストレスなく、効率よく身体活動を増やしましょう。

 年末年始、お仕事がお休みで自宅にいる時間が増えたり、寒くてなかなか外に出られない、、、なんてことがあると思います。そういう時こそ、”NEAT”を意識して生活してみましょう。そして、暴飲暴食をしないよう心がけること、だらだら食べないこと、生活リズムが普段とさほど変わらないようにすることを意識して体重を増加させないようにマネジメントして、楽しく年末年始を過ごしましょう。

 

 

月刊糖尿病ライフ さかえ 2019年8月号 体重をマネジメントするコツ より引用改変

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