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健診・保健指導から糖尿病を考える

[2023.10.12]

「健診」を受けていますか?

 皆さんは「健診」を受ける機会はありますか?日本では、法律に基づいた様々な「健診」の仕組みがあります。生まれて初めて受ける乳児検診や1歳6か月、3歳児健診は市町村が実施しています。小学校に入ると毎年学校で行われており、同じように中学校、高校、大学と所属している学校ごとに健診が行われています。就職してからは、労働安全衛生法という法律に基づき、職場で健診を行います。健診を受ける機会のない人を対象として、市町村が行っている健診もあります。年齢や仕事の種類に応じて健診の内容は様々ですが、日本では国民の健康管理を行うために生涯を通じて健診を受けられる仕組みになっています。

 その中の1つに「特定健診」があります。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。以前は40歳以上の方々の一般的な健診は市町村が住民を対象に実施していましたが、2008年4月からは40~74歳の方の場合、医療保険者が加入者の特定健診を実施することになりました。国が「生活習慣病予防の徹底」を図るため、各医療保険者に対して健診・保健指導の実施を義務付けています。糖尿病などの生活習慣病有病者・予備軍を25%減少させることを目指し、中長期的には社会保障の1つである医療費の適正化を図り、今後も持続可能な社会保障制度となるようにこの仕組みを作ったと言われています。もう1つ大きく変わった点として、以前は健診の受診率を上げることに重点が置かれ、健診後の保健指導は重視されていませんでした。ところが、生活習慣病予備軍に対する生活習慣の介入効果について科学的根拠が蓄積されたことから、内臓脂肪型肥満に対する保健指導の重要点が明らかになり、保健指導に重点を置くようになりました。健診結果などの情報から、個人の方々や地域の健康課題を明らかにすることを出発点とし、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の発症予防と重症化予防を図ることで、脳血管疾患や虚血性心疾患、腎症など生活の質を低下させる疾患を予防し、健康寿命の延伸を図ることに取り組み始めました。

 40~70歳方の場合には、健康保険の加入先や職場から健診の案内が届いていると思います。1年に1回、当たり前のように健診を受けていますが、《保健指導》を受けたことはありますか?

「保健指導」ってどんなイメージがありますか?

 よく耳にするのは、「問題を指摘されて気分悪い」、「自分を数値だけで評価される」、「責められる」など、あまりいいイメージがない言葉です。

 嫌がられる保健指導のよくある例として、血糖値が高いとすぐに肥満だと考えて、上から見下ろして指導、説明。このようになってほしいという枠の中に入れようとする指導からきていると思われます。

 

「保健指導」はこんなことを目指しています

 保健師や管理栄養士は保健指導を通じて、健診結果や血液検査の結果を自分で判断できるようになってほしいと考えています。

 自分の血液データが悪くなる理由や背景の理解が進むような情報を提供し、主体的に血液データを改善するために「こんなことに取り組んでみよう」という選択肢ができるように、その過程を一緒に考えることを保健指導によって目指しています。今の生活が「良い」とか「わるい」とか指導することは、保健師や管理栄養士の判断を押し付けていることになります。自分自身が判断できるように、理解するための情報と判断基準を示すこと、自分の生活を基準と照らし合わせて比較できるようにすることで、自分の身体の状態に合わせて、生活を選択していけたらいいと思います。保健指導を通じて、自分で考え、行動し、「身体を大切にしよう」と思ってもらえたらうれしいです。

糖尿病の治療で大事な「食事指導」は何を目指しているか?

 「こういう食べ方がいい」「わるい」、「あの食品がいい」「これがわるい」ということが食事指導ではありません。大事なことは保健指導と同じで、自分自身で判断できるようになってもらうことです。自分の食の基準が分かれば、自分の食べているものの量や種類について自分で判断できます。食事指導の場面では、飲んだり食べたものをお伺いします。量を確認して、どれだけの糖が入っているのか、その方の基準に対してどうなのか、比較して考えてもらいます。何ならできるか、自分自身で判断して自分がいいと思うことをやってもらう。自分で目標を掲げ、それを試してもらい結果を見る。これを繰り返すことで、自分自身の判断基準が出来上がっていきます。

 

自分の食事の基準はどうやって決めていますか?

 空腹感が満たされ、お腹いっぱいになることが食事量の目安にしている方もいると思います。日本では健康を保持・増進するための食事基準が決められています。それは、厚生労働省大臣が基準を決めていて、「日本人の食事摂取基準」というものがあります。日本人の食事摂取基準には性別や年齢に応じた摂取量の目安や考え方が細かく記載されています。しかし、毎日忙しい生活を送っている方が多く、外食が普及し、自分で調理する習慣がなくなってきていたり、食習慣の多様化が進んでいたりするため、食事について一律に設定することが困難になってきています。数値目標のみを掲げても、食習慣を考慮した個別化を図らなければ、実効性は期待できません。糖尿病治療の目標は、全身の代謝状態を良好に維持し、合併症を防ぎ、糖尿病の進行を阻止することです。食事指導をするときに、以前は標準体重から目標体重を決めていましたが、現在は年齢によって幅を持たせることになっています。厳しい目標体重を設定しても困難な場合が多いため、治療をしている方と相談し、実行可能な目標を検討していくことが必要です。決められた量に収まるような食事指導も、治療をしている方々の食習慣や嗜好を尊重しながら食を楽しむこと、そして継続性を優先させるため、これからは相手の状態に合わせたオーダーメイドにしていくことが必要になっていきそうです。

 

問診はなぜ必要なのか?
 個人の生活習慣は、その方のみでつくられたものではありません。働き方や地域特有の食文化などにも影響され、家庭の習慣にも繋がってきます。保健指導を行うとき、保健師や管理栄養士は生活状況や食事のことをお聞きします。皆さんも経験したことがあると思います。医療機関を受診して問診を受けるとき、プライベートなことを根掘り葉掘り聞かれて嫌だったという話を聞きます。こんなプライベートなことまで聞かれ、話さなければならないのかと嫌な気持になること、とても理解できます。保健指導を行うわたしたちは必要な情報を得ようと、質問攻めにしてしまうことがあります。ですが、指導を行うときの問診、これはとても大切なことなのです。なぜ大事かというと、日常生活や身体の状態は一人一人違います。全く違う一人一人の生活や身体に沿った提案を行うためには身体の中で何が起こっているのかを予測し、重症化しないためにはどのようなことが必要か、また、医師であれば合併症を防ぎ、糖尿病の進行を阻止するためにはどういう治療を行っていくべきかを判断するために、生活の様子や家族、病気のことなど、プライベートなことを聞いています。

 治療に影響するような社会的背景がないか、仕事のことや生活スタイル、家族構成、単身赴任などの状況を伺うこともあります。仕事でストレスが多いのではないか、家族構成によっては他の家族に合わせて食事をすることが多くなってしまうのではないかとか、伺った情報から様々なことを推測して、一人一人の方々に合った方法を提案できたらと思っています。

 

未治療や治療中断の人をゼロに!

 日ごろ仕事をする中で、治療を受けていない方や治療を中断した働き盛りの方々を目にしたり耳にしたりします。受診していない理由や中断してしまった理由を聞くと、「仕事が忙しかった」「自覚症状がないので大丈夫と思った」「受診のたびに何千円も払わないといけない」などのことをよく聞きます。糖尿病のはほとんど自覚症状がないまま進行するため、治療をされる方が治療の必要性を理解していない場合、仕事の忙しさや経済的負担が大きくなるなどのきっかけで治療が継続されず、中断につながってしまいます。結果として、適切な治療の機会を失い、糖尿病やその合併症が重症化してしまう場合があります。糖尿病治療は近年向上し、適切な治療を行うことで合併症を防ぐことができ、進行を阻止できます。

 正しい糖尿病の知識をつけ、何十年と先の生活を見据えた治療(通院)にしていきたいものです。

2023年4月号 さかえ 健診・保健指導から糖尿病を考える より引用

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