メニュー

新たな国民病 CKDの話

[2023.03.31]

 【CKD】という言葉を知っていますか?最近はテレビのコマーシャルや雑誌の広告などで耳にしたり、目にしたりしたことがあるかもしれません。CKDとは慢性腎臓病の略称です。 ※Chronic Kidney Disease の頭文字から取っています。

 日本は世界一の長寿国となり、糖尿病や高血圧といった慢性疾患の患者数が増えています。そしてその先に慢性腎臓病となり、人工透析に入る患者さんも増えています。腎臓は沈黙の臓器と言われていて、腎臓の働きが30%と低下しても自覚症状はありません。※基準値は60%と言われています。

そこで今回は、腎臓についてお伝えしたいと思います。

 

増加している慢性腎臓病患者

慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下する(eGFR60ml/分/1.73㎡未満)か、あるいは蛋白尿が出るといった腎臓の異常が3か月以上続く状態を言います。慢性腎臓病(CKD)の原因となる病気には、慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)、糖尿病性腎症、高血圧が原因の腎硬化症などさまざまな種類があります。CKDの患者さんは1330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられ、新たな国民病とも言われています。

また、CKD患者は心血管疾患(心筋梗塞、心不全および脳卒中)の発症、死亡率が高いこともわかっていて、問題視されています。腎臓の機能が低下し、自分の腎臓の働きでは生体を維持できなくなってしまうと、透析療法や腎移植が必要になります。日本では透析患者の数が近年増加しており、2020年には約34万人となりました。※2000年では約20万人でした。慢性腎臓病の原因となる疾患を透析導入患者でみると、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症と続きます。特に糖尿病性腎症や腎硬化症といった生活習慣病からの透析患者が増加している現状にあります。

 

腎臓のはたらき-排泄と調整

腎臓は、背中の1番下の肋骨よりも下の高さに左右一対で存在する臓器です。成人の腎臓は、長さ10~12㎝、重さ120~300gでそら豆に似た形をしています。

腎臓の働きは大きく2つに分けられます。

1つ目は、尿として老廃物や毒素を排泄する働きです。”尿のもとは血液”というのを知っていますか?腎臓には全身を流れている血液の4分の1が絶えず流れています。これほど大量の血液が流れる臓器は他にありません。この大量の血液を、髪の毛よりも細い血管の塊でできている糸球体と呼ばれる部分でろ過し、尿のもと(原尿)を作っています。それは1日に180ℓ作られていて、そのうち尿として排泄されるのはたった1.8ℓ程度です。尿細管と呼ばれる部分で99%の水を再吸収しているので、ぐっと少なくなります。そして同時に必要な物質(ミネラル、アミノ酸など)も再吸収しています。腎臓は単なる毒素や水の排泄だけでなく、調節という大事な仕事を兼ね備えています。

2つ目の働きは、ホルモンの分泌です。血圧を調整するホルモンや造血ホルモンの産生、さらには骨の代謝にも関わっています。このように、腎臓は全身の環境を調整し、維持しているのです。腎臓という臓器はわたしたちになくてはならない重要なものなのです。

 

慢性腎臓病はほぼ無症状

慢性腎臓病は非常に症状が出にくい疾患です。自覚症状がないとついつい病気を軽視しがちになりますが、それが危険なのです。慢性腎臓病は、腎機能が30%と低下しても自覚症状がないことがほとんどです。しかし、血液検査や尿検査では明らかな異常が確認できます。年に1~2回の定期的な健診は大切ですし、腎機能が60%以下の場合には定期的に受診し、経過をみていくことが必要です。

 

慢性腎臓病の治療

慢性的に悪くなった腎臓を同じように元に戻す治療法は今のところありません。慢性腎臓病の治療は、いかに進行を遅らせるか、いかに今ある腎臓の機能を守っていくかになります。その治療法には薬物療法と食事療法の2つがあります。もともとの原因疾患の治療が大切であるため(糖尿病や腎炎、高血圧など)薬の使用が原則となります。特に高血圧は腎機能を悪化させるので血圧のコントロールは非常に重要です。自宅血圧の測定も治療効果を上げるためには必要です。

また、食事療法も慢性腎臓病の進行抑制のためには非常に重要です。食事の内容は①透析導入前の保存期の食事と②透析導入後の食事、大きく2つに分けられます。共通して重要なのが食塩制限です。血圧、むくみのコントロールには減塩が必須です。

 

あなたの腎機能はどのくらい?

慢性腎臓病(CKD)は、その重症度に応じてステージ1~5の5段階に分けられています。その指標となるのが推算糸球体濾過(eGFR)です。

これは、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。最近は健診結果にも記載があるので、確認してみましょう。

CKDステージ 治療のポイント      
ステージ eGFR(ml/分/1.73㎡) 重症度の説明  
G1 90≦ 腎障害は存在するが、eGFRは正常または亢進している病期。臨床症状に乏しく、健診での検尿や医療機関を受診した際に発見されることが多い。 正常~亢進
G2 60~89 自覚症状はないが、水面下ではCKDが進行している病期。早期診断と進行防止の治療的介入が必要になってくる。 軽度低下
G3 30~59 検査で異常を指摘され始める段階。eGFRが50%の時点で腎臓専門医と連携し、治療を行っていくことが必要。このステージは加齢による腎機能低下のみならず、高血圧や動脈硬化の影響も大きい。 中等度低下
G4 15~29 慢性腎不全の様々な臨床症状が出現する。原則として、腎臓専門医による指導および治療が必要になる。このステージでは治療により腎機能を回復させることは困難であり、いかに腎機能を悪化させないようにするかが重要。 高度低下
G5 <15 緩徐に進行する原疾患により腎臓の諸機能が低下した状態。慢性腎不全の場合は一般的に腎機能の低下が不可逆的であるために、透析療法や腎移植が必要になる。 腎不全

 

腎機能が低下すると、ホルモンバランスが崩れ、余分なものが排泄できなくなり、尿毒症(吐き気、だるさ、食欲不振)、むくみ、高血圧、貧血などの症状が現れます。

また、肥満、脱水、喫煙、鎮痛剤(腎臓の血流を落とし、腎臓を傷める)やサプリメント(腎臓にとって有害なものがある)は腎機能を低下させる要因の1つでもあるので、一度見直してみましょう。

 

 

 

参考文献

医療法人永仁会 永仁会だより第27号

南江堂 コメディカルのためのCKD療養指導マニュアルP21.34.58.78.98.118

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME