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糖尿病と便秘

[2024.02.18]

今回は小児から高齢者まであまねく訴えが多くあります便秘について考えてみましょう。

 特に糖尿病のある方は、糖尿病のない人と比較して、さまざまな消化器症状を訴えることがありますが、その中でも便秘の頻度は高いことが知られてます。実際、糖尿病のある方が慢性的な便秘で悩んでいるのを多く見かけます。

日本では、昔から快適な日々を送るための基本的条件として、快食、快眠ならびに快便の三つの原則が必要と言われており、それが健康の証と考えられてました。しかるに、最近の植物繊維の摂取量の減少、ストレス社会の到来、運動量の減少ならびに高齢化等に伴って便秘を訴える患者数が増加しているのも事実です。

便秘症の定義を考えてみます。

 単に排便回数が少なくなれば即便秘症とはなりません。食事摂取量が少ない場合には、排便回数が少ないからといっても必ずしも便秘とは言えません。また、排便脅迫症なんかが背景にありますと、残便感を訴えても便そのものが直腸にない場合があり、便秘とは言えないからです。

そこで便秘症診療ガイドラインにおきましては、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」としてます。

「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」が持続して、日常生活に支障が生じていれば便秘症と考えて、治療を行っていくとしてます。何日に1回の排便とか、具体的に定義されるものではないということです。

そして便秘の症状としては、おおきく2つに分かれます。便意はあるけどうまく出せないタイプと、何日も便が出なくてつらいタイプです。しかし対処法は2者ともほぼ同様ですので無理に分類する必要はないでしょう。

 

むしろ糖尿病のある方にとっては、便秘しやすいという原因を考えてみることが大切です。

 基本的に血糖が高いという状態は胃の働きを抑えて食物の排出を遅らせます。また脱水をもたらすため、便秘の原因になります。

 次に糖尿病性神経障害によることが原因として挙げられます。糖尿病が長く続くと起こる合併症のひとつでして、神経障害によって起立性低血圧や発汗異常などいろいろな症状を呈することがあります。自律神経は排便をコントロールする神経ですので、この障害が便秘の主な原因となります。自律神経障害はジンジン、ビリビリといった足の末梢神経障害の症状がみられない時期でもあるとこがありますので注意が必要です。

 更に知っておきたいのは糖尿病の治療薬の中には、その作用機序によって、便秘に影響を与える薬剤があるということです。具体的にみていきましょう。

糖尿病薬 イラスト に対する画像結果

 

  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、グルコバイ、セイブル)

腸において糖の吸収を遅らせる薬ですが、腸で働くため副作用として,お腹が張る、放屁、下痢、便秘をきたすことがあります。

  • GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ、オゼンピック、リベルサス、トルリシティ)、DPP-4阻害薬(ジャヌビア、テネリア、ネシーナ等)

インクレチンというインスリンの分泌を促す消化管ホルモンを増やす薬です。消化管の動きを抑える働きがあるため、これでも便秘を生じることがあります。

GLP-1受容体作動薬でその頻度は高いですが、DPP-4阻害薬では比較的まれです。

 

  • SGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガ、スーグラ)

血液中の糖を尿と一緒に排出して血糖を下げる薬です。糖が水分を引っ張って、尿量が増えるため脱水になりやすく、水分を十分に摂らない方は便秘になることがあります。

現状、糖尿病で便秘の方の多くは、市販薬を購入するか、あるいは民間療法を用いて自身で対処していることが多ですが一度は主治医の先生と相談してみるのも良いでしょう。

 

その他、食事制限による摂食量の減少やストレスなどの心理的因子などが便秘に関与することがあります。

 

便秘の解消法を考えてみましょう。

それは食事内容の見直しや適度な運動など、生活習慣の改善が便秘解消の基本となります。

 

食事内容の見直しのポイントをあげていきます。

 便秘症の改善には食物繊維の摂取が有効です。糖尿病があって食事を少なめにしてる方は、食物繊維が不足しがちになるので特に注意が必要です。

 食物繊維が便秘に作用するメカニズムは①植物繊維が便の量を増やし大腸通過時間を短くする、②発酵した食物繊維は短鎖脂肪酸(酢酸とか酪酸)を作り、浸透圧を増大させて大腸通過時間を短縮する、③短鎖脂肪酸は、腸管内のフローラ(細菌叢)を変化させて、大腸通過時間を短くする④食物繊維は水分を含むことにより便性状と量を改善する。とかいろいろ考えられてます。

 繊維を多く摂る工夫としては、玄米、5分搗米を取り入れたり、白米に雑穀を添加するなどが有効です。パンを好む方には玄米パンや胚芽パン、クルミパン、ライ麦パン、オートミールなどが良いでしょう。またうどんより日本そばの方が繊維が多く含まれています。菓子、菓子パン類が多い人ほど便秘が多いので注意が必要です。

 野菜を多く摂りましょう。野菜というと生野菜が頭に浮かびますが、生で摂るだけでなく、蒸したり、茹でたりして、かさを減らすと食べる量を増やすことがでます。その他、きのこや海藻、豆類も積極的に摂るようにしましょう。

 腸内細菌は善玉菌と悪玉菌に分けられ、善玉菌は腸管運動を整え便秘を予防するといわれています。これをを増やすには発酵食品、乳製品、大豆製品などです。特にヨーグルトなどの乳酸菌食品が便秘対策に有効です。

 

適度な運動がすすめられます。

激しい運動より、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。

腰をねじる運動も、腸を刺激して蠕動運動を助けます。

 

腹部のマッサージ

お腹に手をあて、時計回りにゆっくりマッサージをします。5~10分程度を、毎日寝る前に続けると、便秘の解消が期待できます。

ほかに右左の脇腹を上下に揉む、下腹部を上に押し上げるように圧迫して腸の運動を刺激するなどが知られてます。

 

排便姿勢も大切です。

 蹲踞(そんきょ)の姿勢(スクワッテング)をとることによって、排便しやすくなります。排便困難型の便秘症に有効です。和式便器なら良いですが洋式便器の場合は座って写真のように前屈姿勢をとるとよいでしょう。また足台を用いることによって便を出しやすくすることが知られてます。

                     日本大腸肛門学会誌   第72巻 第10号  

その他、睡眠も大切です。不眠時間が短い方は便秘が多いと言われてます。

睡眠を十分にとれるような工夫をしていきたいものです。

 

このような事を心がけてもなかなか便秘が解消されないことも多々あります。このような場合便秘薬を使用しなければならなくなります。

 

 刺激性下剤(プルゼニド、アローゼン)は、効果が出やすく多用されがちです。腸のぜん動運動を亢進させ、腸内容の移動を保進させるのですが、長期間使用することによって逆に腸のぜん動運動を低下させ、便秘をさらに悪化させる場合があります。短期リリーフ的な使用に留めましょう。

 酸化マグネシウムは、非刺激性の便秘薬であり、便秘の第一選択薬です。但し、腎機能が低下している方では、高用量や、長期的に使用すると高マグネシウム血症になることがあるので注意が必要です。時々はマグネシウムの値を診て貰いましょう。

 最近、胆汁酸トランスポーター阻害薬(グーフィス)という腸内の水分分泌と腸の動きを活発にする便秘薬が使われるようになりました。この薬は少し血糖を下げる作用があると言われ、糖尿病のある方には使いやすい薬です。

 また最近は上皮機能変容薬(アミティーザ、リンゼス)という効きの良くなっている薬が使用可能です。効果は強いのですが下痢とか、悪心、腹痛が出ることがありますので注意が必要です。ガイドラインでは酸化マグネシウムような浸透圧性下剤とこの上皮機能変容薬が一番強く推奨されていることも知っておきましょう。

漢方薬(大建中湯など)も有効なことがあります。試してみる価値はあります。

 

最後に便秘の原因として大腸の疾患があることも忘れてはいけません。腫瘍ができていて腸が狭くなり排便が困難になっていることもあり得ますので。

定期的に大腸カメラなどの検査をして、体調管理に努め、食事、運動に気をつけ、快適な日々を送りたいものです。

 

参考資料 ノボケアオールイン  no.15  2023

     慢性便秘症診療ガイドライン2017

     日本大腸肛門学会誌   第72巻 第10号

  2019

          

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