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腎臓にやさしい生活習慣をつけましょう

[2023.10.22]

前々回、慢性腎臓病(CKD)とはどの様なものかとのお話しをしました。再度その定義を掲載しますと

 ➀ 腎臓の障害を示唆する、尿蛋白が陽性であること。

   0.15g/gCr以上の蛋白尿、または30mg/gCr以上のアルブミン尿の存在

 ➁ 腎臓の働きを示す糸球体ろ過量GFR)が60ml/分/1.73m2 以下であること

、➁のどちらか或いは両方です。

このようなCKDの基準を満たす方、過去においてCKDと言われた方、この基準に近くなっている方、腎臓に関心がある方に特に見ていただきたく書いてみました。糖尿病はあってもなくても同じです。

CKDの発症および重症化には生活習慣や生活習慣病が深く関わっています。その生活習慣の中には特にCKDの発症、重症化に大きく関わっているものがあります。そこでどのような生活習慣がCKDリスクに関与してるのかを今回考えてみたいと思います。

 

まず喫煙はどうでしょうか。

 わが国において習慣的に喫煙している人の割合は、男性 27.1%、女性で 7.6%です。この10年間でみますと、いずれも減少しているものの依然として高いです一般住民での調査では、喫煙がCKDの発症に関係する1つの予測因子であることが示されており、また糖尿病患者でも喫煙が微量アルブミン尿(これはCKDの定義の一つですね)の明らかな予測因子と報告されています。そして、喫煙はCKDになってしまった患者さんの蛋白尿を増加させ腎機能障害の進行を促進することも示されています。

 逆に禁煙によりCKDの進行を抑制できると言えます。アルブミン尿を有する糖尿病患者さんでは、禁煙によるアルブミン尿の減少が報告されてます。腎機能が低下してる患者さんにおいても、禁煙によって腎機能障害の進行抑制が示されてます。

従いまして、CKD患者さんの禁煙はおおいに推奨されます。10年以上の禁煙であれば大いに期待できます。

 

次はアルコールです。

 日本人のある集団での研究では、エタノール(これはアルコールそのものと考えてよいですが)20g/日以下のアルコール摂取はCKDの発症リスクを低下させたという報告もありますが、その大量飲酒(エタノール60g/日以上)は高血圧やCKDや末期の腎不全のリスクとなることが示されてます。またエタノール40g/日以下のアルコール摂取は血圧を低下させるという報告もあります。

節度ある適度な飲酒として1日20g程度のアルコール摂取が良いですね。

ちなみにエタノール20gとは、ビールで中瓶1本(500ml)、清酒で1合、ウイスキーダブル1杯、焼酎25度で0.6、35度で0.4合、ワインならグラス2杯です。

これって糖尿病患者さんにおける適量と同じですね。但し焼酎は飲みやすい為か1合ぐらいが適量と思っている方も多いので注意致しましょう。

 

コーヒー摂取によるCKDの進展抑制の効果

 コーヒーにはカフェインなど抗酸化作用や抗炎症作用を示す物質が豊富に含まれており、CKD進行の抑制効果が期待されます。少なくともコーヒーが腎臓に害を与えることはないといえるでしょう。コーヒーを飲む方は、喫煙したり、高血圧であったり、肥満であったりして他のCKD発症のリスク因子をだぶって持っていることも多く、これまでの研究結果はコーヒーの有効性を過小評価していたかもしれません。

 

便秘はCKDに影響するでしょうか

 便秘はCKDの発症・進展のリスクになります。

近年の研究では腸内細菌叢の乱れが尿毒症物質の増加や全身臓器の合併症に関与しているという報告がなされてます。特に糖尿病患者さんは、自律神経障害や薬剤の影響もあって便秘になりがちです。普段から運動、繊維の多い食事を心がけましょう。

 

CKD患者さんは口腔ケアが大切

 口腔不健康状態はCKDの悪化に伴い増加して、フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)や死亡率上昇に繋がります。CKD患者においては口腔ケアが勧められます。

CKD患者さんは唾液流量が低下して口腔の乾燥状態が増加することや、口腔内のpHも上昇して感染しやすくなっています。 歯周病にもなりやすくなります。口腔ケアをすることによってフレイルを予防し、健康寿命を延ばしたいものです。

 

CKD患者さんにおいて睡眠時間は大事か

 適度な睡眠時間は身体の代謝やさまざまな生理機能を維持するうえで非常に大切です。

短時間や逆に長時間の睡眠が糖尿病、肥満、高血圧、心血管病変と関連して死亡率が増加することが知られてます。

CKDにおいても睡眠時間と腎機能、睡眠時間と蛋白尿との関係はいわゆるUの字型でありまして睡眠時間は短くても長くても良くないのです。適度な睡眠時間(7~8時間)が勧められます。

 

 

慢性期CKD患者において、通常よりも意図的に飲水量を増やすことは推奨されでしょうか?

 飲水は日常生活で欠かすことのできない行為です。飲水量を増やすことは尿路結石の再発予防になり、腎機能悪化の抑制効果も期待されます。一方で過度な飲水は頻尿など下部尿路症状の悪化や低ナトリウム血症などの副作用のリスクも懸念されます。飲水量を通常よりも1Lから1.5L/日増やしてもeGFR低下速度を抑制しない報告もあります。

 CKD患者さんの適切な飲水量については明確な基準はありませんが、中程度の腎機能低下の患者さんを対象にした研究では、1日の飲水量1~1.5Lで末期腎不全のリスクが最も小さかったというものがあります。飲水量1L/未満の少ない飲水習慣では末期腎不全のリスクが上昇することも示されています。また飲水量2L/日以上でも末期腎不全のリスクが上昇したという報告もあります。飲水量と腎不全の関連もUの字型です。

「通常よりも意図的に飲水量を増やすことは行わなくて良い」というのが結論です。ただし年々猛暑が厳しくなる昨今では脱水には十分気を付けておくべきです。脱水は必然的に腎機能を落してしまいますので。

 

CKDにおける新型コロナウイルス感染症予防対策は

 CKDにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化因子の1つでして、感染予防対策は特に重要です。ワクチン接種、マスク、手洗いを励行しましょう。

CKD患者さんは一般に免疫力が低下しているため感染による合併症や死亡のリスクが高くなります。感染すると腎機能も落ちます。従いまして、感染リスクの高い病原体に対しては、ワクチン接種による予防が推奨されます。インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンなどは是非打っておきたいものです。

 

慢性CKD患者さんにおいて運動は推奨されるか?

 CKD患者においても、身体活動度の低下は心血管病による死亡のリスクでありまして、運動療法が重要となりうえます。運動はCKD患者において心血管病による死亡リスクを減少させることが報告されてます。以前は、運動は蛋白尿や腎機能障害を悪化させるという懸念からこれまでは推奨されませんでしたが、このような運動制限に臨床的な根拠はないのです。運動による蛋白尿の増加は一過性(1~2時間)で、長期的に増加することはないのです。

 腎機能に関しても、運動時にGFR糸球体ろ過量)は一時的に低下しますが、長期的な影響を検討した臨床研究では、適度な運動による腎機能障害の悪化はなくて、逆に改善したとする報告もみられます。ただしこれらの報告の多くは、中等度の運動強度(5.0~6.0メッツ程度)での検討です。

 5.0~6.0メッツの運動とは子供と遊ぶ(ドッジボール、遊戯具)、ソフトボールや野球、動物の世話(活発に)、かなりの速歩、自転車エルゴメーターなどが相当します。

結論として、中等度の強度で1日30分の運動を安定したCKD患者では、心肺機能に問題ない範囲での定期的な運動が勧められます。翌日に疲れが残るほどの激しい運動、長時間の運動は勧められません。

 

最後に減塩の話です。 CKD患者さんの食塩制限は絶対必要です。

 余分な食塩を排出するためには腎臓は多大なエネルギーを要し、大きな負担を腎臓に与えます。食塩制限はどうしても必要です。

食塩制限には尿蛋白の減少や腎機能障害の進行を抑制する効果が認められてます。また十分な降圧を図るためには食塩制限が推奨され、その結果として腎機能障害の進行抑制が期待できます。ガイドラインではCKDの重症度によらず食塩の目標摂取量を6g/日未満としてます。日本人の平均食塩摂取量10g/日と言われてますが実際には15g、20g位摂っている方が結構います。そのような方が6g/日未満を達成するのはなかなか困難なものです。先ずは10g/日以下を目標に頑張ってみると良いでしょう。

 

 食事の話としては蛋白制限食の実行があります。これはその実践の難しさ、効果の不確定さからCKD患者全員に適応できるわけではありません。これに関しましては話が複雑なのでまた別の機会に話させてもらうつもりです。 今回はこれで以上です

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