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食事のトリセツ

[2023.09.18]

今回は、食事の基本について話させてもらいます。

 皆さんは糖尿病の食事療法と言いますと先ず食べるものの制限、カロリー制限、糖質制限が頭に浮ばれる方が多いかと思います。しかし、特段に制限はしなくても次のようなことに注意してればかなり良いところまで行けるのではないでしょうか

先ずは3食きちんと。です

 食事療法において重要なことは、3食きちんと食べる、20分以上かけて食べる、寝る前3時間は食べない、野菜を先に食べること。です。食事の改善はまず、3食きちんと食べることから始めます。欠食により、次の食事で血糖が上がりやすくなるからです。また、寝る前3時間は食べないことも重要です。食べてすぐに寝ると翌朝の血糖値が上がってしまいます。夕食はなるべく早い時間に食べるようにしましょう。

 早食いもよくありません。どんなに忙しくても、食事には20分以上の時間をかけるべきです。ゆっくりよくかむことで、食事中わずかに上昇した血糖値が満腹中枢を刺激します。また、咀嚼により満腹中枢が刺激されます。従いまして、仕事の合間に5分程度で食事をしてしまうことは避けましょう。

   

 食物繊維には急激な血糖上昇を抑える働きがあるため、食物繊維を多く含む食品(豆類、根菜類、海藻類、ナッツ類、きのこ類など)を積極的に摂取しましょう。1日20g以上が推奨摂取量です。

海藻類・きのこ類

海藻類やきのこ類を多く食べましょう。これらの食材に多く含まれる食物繊維には血糖値の急激な上昇を抑えるからです。

野菜類

 一般論としてはもちろん多く摂取した方がよいのですが、ジャガイモやトウモロコシには注意が必要です。これらは糖質が多いため、ポテトサラダやコーンサラダを多く食べると、意外と血糖値が上がってしまいます。たくさん食べた方がよい野菜は、トマト、キュウリ、レタス、ホウレンソウ、ニンジンなどです。またマヨネーズやドレッシングのかけ過ぎには注意しましょう。

 このように積極的に摂取する食品を知って、さらに食べる順番も意識してみましょう。食物繊維が豊富な野菜類を最初に食べて、次に魚や肉を食べ、ご飯などの糖質の摂取を最後に回す方が、血糖値は上がりにくくなります。魚や肉をご飯より先に摂取することは、腸からのインクレチンというホルモンの分泌を促し、これがインスリンの分泌を改善します。これが大切です。

   

果物は適量を

 山梨は果物が多く採れるのでどうしても多くなりがちです。果物は果糖を多く含みますので血糖値を上げてしまいます。1日80kcal分、バナナなら1日1本、リンゴや柿なら1日半分、みかんは小さいものを1日2個までに抑えましょう。ビタミンやミネラルは、野菜がたくさん取れていれば問題ありません。たくさんは野菜を食べられないという方には、市販されている無添加・低カロリーの濃縮野菜ジュースもお勧めです。

飲み物は水、お茶を中心に。
 清涼飲料水やスポーツドリンクは血糖値を上げてしまいます。夏は、熱中症の予防をうたったスポーツドリンクの宣伝が目立つようになりますが、糖尿病のある患者さんは、通常の水やお茶を多く飲み、塩分は塩や梅干しで補うようにしましょう。毎年夏場は、スポーツドリンクの飲み過ぎで強い高血糖になってしまう方が出てきてしまいます。平時の飲み物も、水、お茶(緑茶、麦茶、ウーロン茶)と無糖のコーヒーや紅茶にして、牛乳も1日コップ1杯に抑えるようにしましょう。

糖質は摂り過ぎても、制限しすぎても良くありません。
  厳格な糖質制限食(40%未満)は勧められません。日本での研究も含めた2018年の多人数の解析では、糖質の割合が40%未満でも70%超過でも、死亡リスクが高くなっています。
従いまして、もともと糖質摂取量がかなり多い患者さんでは、糖質を減らすという点は意味がありますが、あまり減らし過ぎてもいけません。40%未満の厳格な糖質制限食はお勧めできません。長期的には死亡リスクを高める可能性があるからです。また厳格な糖質制限食をされてる方がSGLT2阻害薬を併用しますと、糖尿病性ケトアシドーシスという病態を引き起こすリスクがあるので危険です。

総合的に考えて、日本人に勧められる栄養摂取比率としては「糖質50%、蛋白質20%、脂質30%」程度が妥当です。実際、日本糖尿病学会では、「糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率」として、「一般的には、炭水化物40~60%、蛋白質20%までを目安とし、残りを脂質とする」としています。

 更に、米国糖尿病学会の診療ガイドラインでは、「栄養素の推奨摂取比率はない」としています。そのため、推奨摂取比率に対して神経質になるよりは、「食物繊維をたくさん取る」「糖質は取り過ぎも、制限し過ぎもよくない」などのポイントを意識して食べると良いでしょう。

アルコールは適量を。

 血糖コントロールが良好なら、量を減らせば飲酒自体は可です。具体的には、日本酒で1合、チューハイ(7%)では350ml、ビールで缶ビール(350mL)1本、ワインでグラス2杯程度を週に数日なら糖尿病は悪化しません。しかし、これで収まる方は特に男性ではなかなかいないのが現実ではありますが。もちろん、アルコール性肝硬変や膵炎、高度の高中性脂肪血症、アルコール依存症の人は禁酒が必要です。そうでなければ節酒でもよいでしょう。
ただし、アルコール自体やつまみで、カロリー過剰になりやすいこと、糖尿病薬の種類や飲酒の仕方次第では低血糖を引き起こす可能性があることは知っておきましょう。また、糖質を含まないお酒(ウイスキー、焼酎)も、血糖値は上がりにくいとはいえ、肝臓のためにはあまりたくさんは飲まない方がよいでしょう。
禁煙を。
 喫煙は動脈硬化を早め、心臓病を起こしやすくするほか、全ての細胞機能を落として老化を早めます。HDL(善玉)コレステロールも下げてしまいます。糖尿病についても、喫煙は脂肪細胞から分泌されるホルモンであるアディポネクチンの分泌を抑え、病気の悪化につながります。禁煙外来に通ってでも、ぜひやめてもらいたいものです

 以上簡単ではありますが、食生活の基本を述べてみました。これらは血糖改善のためには必須のものであり、また糖尿病のない人と同様な健康寿命を達成するに必要なものであります。この上で不十分であればカロリー制限、糖質制限(糖質を多く摂る方)を考えてみるとよいです。

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