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カーボカウント取り入れてみませんか?

[2023.07.06]

はじめに・・・

 糖尿病において良好な血糖コントロールを保ち、様々な合併症を防ぐために食事療法は必ず行うべき基本の治療です。

 エネルギー量の適正化と栄養素のバランスを基軸としている糖尿病の食事療法の中に”カーボカウント”というものがあります。これは、食事に含まれている糖質(炭水化物の大部分を占める)の量を把握して食事療法に役立てる方法です。この方法を使うことで、インスリン療法中の1型糖尿病や一部の2型糖尿病の場合には、糖質摂取量に合わせてインスリンの単位数を調整することが容易にできます。

 カーボカウントと糖質制限が混同されることがありますが、カーボカウントは食事に含まれる炭水化物や糖質の量を計算して、食後高血糖をコントロールする方法であり、糖質の制限を目的としたものではありません。食後高血糖を抑えたい、糖質の過剰摂取を避けたい方にもこのカーボカウントは役立てると思います。

 

基礎カーボカウントと応用カーボカウント

 基礎カーボカウントは、カーボカウントの原則を知り、食事中の糖質量を、規則正しく摂取することです。指示されたエネルギー量と栄養素の配分から算出される糖質量を朝、昼、夜の3食(必要に応じて間食)にほぼ均等に配分して、それぞれの食事を毎日規則的な食事間隔で摂ることによって、食後の血糖が安定し、血糖コントロールが良好になります。

 応用カーボカウントでは、インスリンの投与量と食事に含まれる糖質量を調整し、食後高血糖を適切にコントロールすることです。1型糖尿病や2型糖尿病の患者さんで頻回注射法やインスリンポンプ療法を行い、毎食前に超速攻型インスリンあるいは速攻型インスリンを使用する患者さんが対象になります。基礎カーボカウントを習得したのちに応用カーボカウントを行うのがセオリーですが、発症直後からインスリン療法が必要な1型糖尿病の方などでは、基礎カーボカウントを習得しつつ応用カーボカウントを早いうちから開始する場合もあります。

 

炭水化物の分類、カーボカウントにおける炭水化物

 炭水化物は単糖あるいは単糖の重合体で、エネルギーになる糖質とエネルギーにならない食物繊維に大きく分けられます。食物繊維は血糖値を上昇させませんが、糖質は食後の速やかな血糖上昇につながり、多く摂取すると高血糖になってしまいます。したがって、カーボカウントにおいて実際に計算すべきものは、炭水化物から食物繊維を差し引いた糖質です。なかでも、食後の血糖上昇に直接関わる糖質は、単糖類のブドウ糖(グルコース)、二糖類の麦芽糖(マルトース)、ショ糖(スクロース)、乳糖(ラクロース)、そして多糖類のでんぷんです。糖アルコールや合成甘味料の一種であるスクラロースなども糖質ですが、血糖上昇には関わらないため、カーボカウントでは計算しません。したがって、カーボカウントでは糖質に含まれる単糖類、二糖類や三糖類以上のオリゴ糖やでんぷんなどを計算します

 

カーボカウントにおいて炭水化物(糖質)を計算すべき食品

 カーボカウントを行う際に、炭水化物(糖質)量を計量すべき食品は「食品交換表」で表1の穀類、いも、炭水化物の多い野菜と種実、豆(大豆を除く)、表2のくだものだけではありません。表4の牛乳と乳製品(チーズを除く)は、炭水化物(糖質)の含有量が比較的高いので、これらの炭水化物(糖質)量も計量します。なお、表3には炭水化物(糖質)量が少なく、表5の食品のほとんどは炭水化物(糖質)を含まないので計量しません。

 菓子類や清涼飲料水などにはショ糖が多く含まれています。ショ糖は分解酵素によってブドウ糖と果糖に分解され、このブドウ糖が食後の血糖上昇に影響します。したがって、カーボカウントにおいて菓子類や清涼飲料水なども計量の対象になります。一般的にショ糖を多く含む食品は高エネルギーかつ主要な栄養素のうち炭水化物に偏っている場合が多いので、摂取はなるべく少量に留めるほうがベターです。ショ糖を含む食品を摂取するときには、多様な栄養素を含む低エネルギー食品(野菜など)を一緒に摂ることをお勧めします。

 

1日の指示エネルギー量から摂取する糖質量を決める

エネルギー栄養素の摂取比率は

炭水化物:たんぱく質:脂質=50~60%:20%まで:差し引いた数値

としています(患者さんの病態や食習慣により個別に設定します)。

炭水化物のエネルギー換算係数を1gあたり4kcalとすると、以下の算式で求められます。

指示炭水化物量(g)=1日の指示エネルギー(kcal)×50~60%÷4(kcal)

1800kcal/日だとしたら、1800×50~60%÷4=220~270g/日

となります。基本的に糖質10gで1カーボとして計算します。ですので、1食あたりの糖質量は70~90g(7~9カーボ)を目安にすると良いです。

 

糖質量(カーボ量)を見積もる

 ご飯やパン、麺類など主食による糖質量(カーボ量)を把握して、外食する際にもカーボカウントで適量を見積もっていきましょう。外食は、自宅で食事をするよりも糖質の過剰摂取に繋がりやすいので、食べ過ぎ防止に役立ち、食後の高血糖を予防できます。

 

主食

ごはん 100g:3.5カーボ

    150g:5.5カーボ

    200g:7カーボ(100g:3.5カーボ×2として計算)

    250g:9カーボ(100g:3.5カーボ+150g:5.5カーボとして計算)

自宅 茶碗1杯 150g:5.5カーボ

外食 普通盛 200~250g:7~9カーボ

   丼もの 300g:10.5カーボ

寿司 1貫 30g:1カーボ(酢飯に砂糖やみりんが入っている)

食パン 8枚切り1枚:2カーボ

    6枚切り1枚:3カーボ

ロールパン 1個:1.5カーボ

クロワッサン 1個:2カーボ

サンドイッチ 1切れ:1カーボ

メロンパン 1個:6~7カーボ

うどん 1玉:4カーボ

そば 1玉:4.5カーボ

中華麺 1玉:7カーボ

スパゲッティ(乾)1人前(100g):7カーボ

 

おかず・その他

魚・肉・卵:0カーボ

煮付・タレがある場合+0.5カーボ

唐揚げ・カツの衣は+1~2カーボ

 

野菜は基本的にカウントしない(イモ類は計量する)

イモ類は卵1個のサイズで1カーボ

親指と人差し指をくっつけたOKサイズで0.5カーボ(さつま芋のみ1カーボ)

 

ジュース(果汁30%でも濃縮還元でも) 100ml:1カーボ

スポーツドリンク・牛乳 200ml:1カーボ

 

みかん1個分の大きさの果物は約1カーボ

みかん 1個:1カーボ

キウイ 1個:1カーボ

グレープフルーツ 1個:2カーボ

いちご 1パック(小ぶりのもの20個):2カーボ

りんご 1個:2カーボ

バナナ 1本:2.5カーボ

柿 1個:2.5カーボ

パイナップル 1個:5カーボ

 

 上記に記したカーボで見積もり、適正な糖質量での食事を心がけていくことも食事療法の1つです。糖質の摂りすぎは中性脂肪やコレステロールの数値にも影響します。動脈硬化の促進、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクも上昇してくるので、今の食事を一度振り返ってみてはいかがでしょうか。思っていたよりも多く食べていたな、もう少し摂っても大丈夫なんだな、など何か気付きが出てくるかもしれません。

 糖尿病の食事は制限食ではありません。適量を守り、みんなで楽しく食卓を囲みましょう。

 

 

参考文献

文光堂 日本糖尿病学会編・著 医療者のためのカーボカウント指導テキスト

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