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糖尿病と飲酒

[2024.06.24]

始めに・・・

 「ほどほどの飲酒は身体に良い」と聞いたことがある人もいるでしょう。実際に、毎日適量の飲酒をしている人では、全く飲まない人や飲みすぎている人に比べて、死亡率が低いことや動脈硬化症になりにくいことが知られています。糖尿病についても、さまざまなアルコールの功罪が言われています。最近注目されているのは「飲める体質かどうか」が、糖尿病の発症に関連しているということです。今回は糖尿病に関連したお酒との正しい付き合い方についてお話します。

 

お酒が飲める・飲めない体質

 お酒は人によって強い、弱いがあります。一口飲んだだけでも気分が悪くなってしまう人から、いくら飲んでも酔えない人まで様々です。このアルコールを飲めるかどうかの体質は、遺伝子で決まっています。

 アルコールは主に二つの重要な酵素により代謝されます。第一段階として、アルコール脱水素酵素(以下ADH)によってアセトアルデヒドという物質に分解されます。さらにアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(以下ALDH)によって酢酸に代謝され、最終的には二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解されて体外に排出されます。楽しく酔っている状態を作り出しているのがアルコールで、顔を赤くしたり、気分を悪くしたりする作用を持つのがアセトアルデヒドです。人によってADHやALDHの活性が異なるため、楽しくお酒を飲める人もいれば全く飲めない人もいるということになります。この体質を決める最も重要な酵素として、ALDH2があります。ALDH2の活性は遺伝子のタイプで大きく異なり、日本人の50%が高活性、5%が無活性、45%がその中間になります。

 このような特徴は全世界を見ても、中国や韓国といった東アジア諸国にしかありません。欧米諸国において無活性型は0~2%程度と極めて低いことが知られています。ALDH2の活性が全くないような人では、アルコールを飲んだ後、すぐにアセトアルデヒドが体内に蓄積し、赤くなったり悪酔いしたりします。

 遺伝子型は生まれた時点で決まっているので、その後に変わることはありません。その人の体質とも言えるでしょう。そしてこの遺伝子型によって発症しやすい病気も違います。例えば、日本人でALDH2が活性型ではない人がアルコールを多く飲むと食道がんや咽頭がんのリスク因子になることが知られています。生まれつきのアルコールに対する強さが、病気の発症しやすさを部分的に決めています。

お酒が飲める体質と糖尿病のなりやすさ

 ALDH2の遺伝子型と糖尿病の関係について、新しい研究データが出ました(2022年11月現在)。東アジア人約43万人の遺伝子を詳細に解析したところ、ALDH2遺伝子型が男性の2型糖尿病の発症しやすさと関連していることが分かったようです。具体的には、ALDH2活性が高い遺伝子を持つ人ほど、糖尿病になりやすいことが明らかになりました。つまり、お酒を飲めるタイプの男性は糖尿病になりやすいということです。

 アルコールに強い遺伝子型の男性では、飲酒量が多いことにより肝臓でのインスリンの効きやグルコースクリアランスが低下し、血糖値上昇を引き起こす可能性があることが明らかになりました。これがアルコールに強い遺伝子型の人で、糖尿病発症リスクが高くなる原因の1つではないかと考えられています。

 以前は「適量の飲酒は糖尿病に対して予防的にはたらく」ということが言われていましたが、アジア人や日本人のデータを解析すると、適量の飲酒は糖尿病に対する予防効果がほとんど認められないことは明らかです。

 

お酒と糖尿病

 糖尿病になって、お酒を控えるようになった方も多いかもしれません。毎日飲みすぎるようなことは、血糖値のコントロールを乱すだけではなく、肝疾患やがんなど様々な病気のリスクになるのでお勧めできません。お酒の適量といえるおおよその目安としては、純アルコール量として1日約20gと言われています。
具体的には

缶ビール500ml 1本  日本酒 1合  焼酎 0.6合  ウイスキー ダブル(60ml)  などの量に当てはまります。

 ただし、お酒に対する強さはそれぞれです。ALDH2活性の弱いタイプではもっと少ない量になるため、個人個人に応じて量を減らすようにするといいでしょう。また「お酒をやめたら甘いものを食べるようになって、かえって血糖値が上がってしまった」という方も多くみられるので、食事パターンの変化にも注意が必要です。インスリンを打ってる方は飲酒により低血糖となる場合があるので、この場合にも注意が必要です。

 

 最近はアサヒ飲料のCMで”スマドリ”という言葉を耳にしたことはありませんか?この”スマドリ”の意味は、【一人ひとりの体質や気持ちに合わせて、思い思いのドリンクを安心して選べる。だから誰もが楽しめる。多様性を認め合えるこれからの飲み方。それが、スマドリ(=スマートドリンキング)。】だそうです。お酒に対しても多様性が求められる時代になりました。それぞれの体質にあったお酒の量で、その場の時間を楽しんでいきましょう。

 

2022年11月号 月刊糖尿病ライフ さかえ プラスワン講座 糖尿病と飲酒

スマドリでええねん!|アサヒビール (asahibeer.co.jp)  より引用

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