血糖、血圧、コレステロール まとめて良くしましょう!!
まとめてという意味は、血糖以外に血圧やコレステロールや中性脂肪もという意味です。
どうしても血糖が最初に気になった方、糖尿病の方ということですが、はあまり血圧やコレステロールには関心が行かない傾向があります。また自分は高血圧症であると思って治療されてる方は血糖や脂質(コレステロールと中性脂肪のことです)には関心が乏しくなりがちです。
ある会(トリプルリスクを考える会)によりますと30~60歳代の男女1200人を対象に調査によりますと、血圧・血糖・血中脂質の3つのうち「1つ以上ケアしている」と答えた人は32%と3人に1人だったが、「3つともケアしている」という人はわずか11%でした。1つのことに神経が集中すると他のことには関心が薄れてしまいがちということをよく表してます。
前回、糖尿病と高血圧の両方があると心臓や脳の合併症が掛け算式に多くなるので気をつけましょうという話をしましたが、今回は血糖と血圧と脂質の3つを同時に管理することがとても大切という話をしたいです。
この3つを同時に管理することの大切さは西洋と日本でそれぞれ行われた2つの大規模臨床研究が如実に示しておりますのでこれを紹介したいと思います。
最初はデンマークで行われた“ステノ2”という臨床研究です。
160例の糖尿病で微量アルブミン尿を認める患者さんで次のような危険因子への総合的な介入を行ってみました。
まず生活習慣の改善を行ってもらいました。
- 適切なカロリーを守って、過剰な動物性脂肪の摂取を控え植物性脂肪の摂取を増やす食事療法を行ってもらいました。
- 30分程度の軽い運動を1週間に3~5回行ってもらいました。
- 禁煙の生活習慣の改善を指導しました。
危険因子の改善目標値を定めました。
- 血糖は6.5%未満
血圧130/80mmHg未満(これは少し厳しいかと思われるかもしれませんが)
総コレステロール175mg/dL,中性脂肪150mg/dL未満としました。
- 目標達成のため積極的に薬物療法を行ないました。
平均7.8年の経過観察で、生活習慣の改善では飽和脂肪酸(動物性脂肪)の摂取が、危険因子ではコレステロールと血圧が顕著に改善しました。しかし肝腎の血糖コントロールはHbA1c6.5%未満の達成は約15%と少なかったです。それでも結果は驚くべきものでした。これらの多角的で積極的な治療によって、心筋梗塞、脳卒中、心血管死がなんと50%減少させたことが明らかになりました。そして糖尿病特有の細小血管障害(糖尿病性腎症や網膜症のことです)の発症・進展も強化治療で顕著に抑制されたのです。
“ステノ2”が終わった後の経過観察によれば、“ステノ2”(平均7.8年間)を終了して、5.5年の経過観察期間を経て、通常に治療していた患者さんと血糖、血圧、脂質は差を認められなくなっても、引き続き多角的積極的な治療群で血管障害の減少、心血管死やその他の死亡率の低下が認められていたのです。血糖のコントロールは必ずしも十分でなくても多角的で積極的な治療をすれば合併症の発症・進展の抑制に大変有益であるということを世界中に知らしめたものでした。
同様な報告は日本でもあります。それは大規模臨床試験“J-DOIT3”というものです。
全国81施設で、心血管のリスクが高い糖尿病患者2542名が登録され、平均8.5年間という長期にわたる介入が2016年3月まで行われました。先ほどのステノ2と同様に血糖・血圧・脂質に対して多角的な加入を行い、
厳格な目標
- 6.2%未満、
- 血圧120/75mmHg未満、
- LDL-コレステロール80mg/dL
の達成を目指し、治療の段階的強化が行われました。
実際の治療状況としては、強化治療によっての平均のHbA1cは7.2%から6.8%になり、血圧やLDL-コレステロールも有意に下がりました。HbA1cの差は僅かに0.4%でした。
厳格な総合的治療を行うと主要な心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中・死亡)は、喫煙の影響を除外すると24%抑制しました。脳血管障害に至っては58%と大幅に抑制できることが明らかになりました。
更に、糖尿病性腎症の発症・進展は32%、網膜症の発症・進展は14%抑制しました。
血糖・血圧・脂質に対してより厳格な目標に向けた統合的な治療を行うことで、血管合併症をさらに減らすことが日本でもはじめて示されたのです。
如何でしょうか。これら“ステノ2”と“J-DOIT3” という2つの大規模臨床試験から見えることは血糖コントロールは必ずしも十分でなくても生活習慣の改善、血糖コントロールのコントロールを行えば血管(心筋梗塞、脳卒中)、腎臓(糖尿病性腎症)、眼(糖尿病性網膜症)の合併症を相当防げるということです。
血糖コントロールが良くても、又たとえあまり良くなくても是非血圧、コレステロールをしっかり下げて健康な人とかわらない人生を送ってもらいたいものです。