血圧値・血糖値・LDLコレステロール値の上昇が意味すること
◎血圧や血糖値、LDLコレステロール値が高くなるってどういうこと?
私たちのからだは、心臓や腎臓、肝臓、膵臓、消化管などの臓器やそれらをコントロールする脳が、絶妙なバランスを保ちながら働くことで、正常な状態に保たれています。これらがどれか1つでも異常をきたすと、バランスが崩れて、思わぬところに異常が現れます。この異常は、すぐに現れる場合と、数年、数十年と長い年月をかけてゆっくり進行し、ある日突然、致命的な症状となって現れる場合があります。
血圧や血糖値、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値が高くなりはじめたということは、これら臓器のバランスが崩れはじめたことのサインかもしれません。つまり、信号が黄色になった状態です。赤信号に変わってしまうと、さまざまな不調が現れ、元に戻れなくなる可能性があります。
注意が必要な検査数値
血圧 |
家庭で測る血圧
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収縮期血圧 125mmHg以上 |
拡張期血圧 75mmHg以上 |
病院で測る血圧
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収縮期血圧 130mmHg以上 |
拡張期血圧 80mmHg以上 |
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脂質 |
LDLコレステロール値 |
120mg/dl以上 |
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HDLコレステロール値 |
39mg/dl以下 |
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中性脂肪 |
150mg/dl以上 |
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血糖値 |
空腹時血糖 |
100mg/dl以上 |
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HbA1c |
5.6%以上 |
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その他 |
eGFR(推算糸球体ろ過量) |
60mL/min/1.73㎡未満 |
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尿たんぱく |
陰性(-) |
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尿中アルブミン |
30.0mg/日以上 |
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◎高血圧・糖尿病・LDLコレステロール値の以上をそのままにしておくと、どうなるの?
血圧の高い状態が続くと、心臓や血管がダメージを受けます
↓
動脈硬化、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心不全、慢性腎臓病
LDLコレステロール値の高い状態が続くと、血管がダメージを受けます
↓
動脈硬化、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心不全、慢性腎臓病
血糖値の高い状態が続くと、血管や神経がダメージを受けます
↓
動脈硬化、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、心不全、慢性腎臓病、失明、認知症
心臓は、収縮と拡張を繰り返しながら全身に血液を送り出しています。心臓から動脈に送り出された血液は、酸素と栄養を全身の毛細血管から細胞に供給します。栄養素や酸素を供給し終えた血液は、毛細血管を抜けて静脈に入り、まるで井戸水が汲み上げられるように心臓に戻ってきます。血液が心臓から出ていくときに血管にかかる圧力が血圧です。
腎臓は、からだの左右に1つずつある臓器で、そら豆のような形をしています。腎臓には毛細血管がたくさん集まっていて、血液をろ過して、不要な老廃物や毒素を尿として排出します。また、尿に含まれる電解質(カリウム、ナトリウム、リン、カルシウム)の量を増減することで、体内の水分量を調節したり、血圧や血液の量を調整するホルモンを出したりします。ほかにも、腎臓はさまざまな役割をはたしています。
からだの60%は水分でできています。この水分は、心臓と腎臓の働きで正常に保たれています。血液は、肺で酸素を取り込み、肝臓で栄養分を取り込んで、全身の細胞に送り届けます。反対に、細胞にたまった二酸化炭素や老廃物などを細胞から抜き取ります。この仕組みが働くには、血液がスムーズに流れること、老廃物などがからだの外に排泄されることが必要です。
血液を全身へ送り出すのが心臓、血液中の不要なものをからだの外に出すのが腎臓、酸素と二酸化炭素を交換するのが肺の役目です。さらに、それらを結び付けているのが血管です。
心臓・腎臓・血管は、ホルモンや神経系なども相互に関連しながらコントロールされていて、それぞれが影響しあっています。LDLコレステロール値や血糖値が上がると、血管が硬くなったり詰まったりして、血液が血管の中を流れにくくなる場合があります。そこで心臓というポンプは、血圧をあげて、より強い力で血液を全身に送り出そうとしますが、血圧が上がると心臓に負担がかかります。同様に、血圧や血糖値の高い状態が続くと、腎臓にも負担がかかり、腎臓の機能が徐々に低下してしまうことがあります。そうなると、尿の量が減り、血液の量が増えてしまうことから、血圧が上がり、さらに心臓にかかる負担が増えてしまします。このように、血圧・LDLコレステロール値・血糖値の上昇は、時間をかけて心臓と腎臓に負担をかけることになり、いずれ心不全や慢性腎臓病といった疾患を招く原因となってしまいます。
◎心臓と腎臓によい生活習慣
血圧、血糖値、LDLコレステロール値が高くなってきたということは、これまでの生活習慣がからだによくないものだったことが考えられます。たとえ薬で一時的に正常な数値に戻せたとしても、同じ生活を続けていれば、再び健康状態は悪くなってしまいます。動脈硬化が進んだり、抹消にある細い血管が詰まったりしても、すぐに症状となって現れるわけではないので、今のうちに生活習慣を見直してみましょう。
心臓と腎臓の負担を軽くする食事は、第一に減塩です。炭水化物、脂質、たんぱく質などは重要な栄養素ですが、摂りすぎは肥満を招き、さまざまな病気の原因になります。
減塩
健康な日本人の目標とすべき1日の食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧や慢性腎臓病の方では、1日6g未満とします(小さじ1杯が約6g)。だし汁、コショウなどの香辛料、果汁や酢などを上手に使って、減塩を心がけましょう。特に、市販の顆粒だしやポン酢などには塩分の含まれているものが多いので要注意です。
野菜や果物を積極的に摂る
腎臓は、体内のカリウム濃度が高いとナトリウムをたくさん排泄する機能を持っています。そのため、カリウムを多めに摂ることで減塩と同じ効果があります。カリウムは野菜や果物に多く含まれていますので、積極的に摂るよう心がけましょう。ただし、高カリウム血症を指摘されている方は注意が必要です。主治医の指示に従ってください。
アルコールはほどほどに
過度の飲酒は、高血圧の原因となることがわかっています。飲酒習慣のある方は、週1日以上、休刊日を設けるようにしましょう。
肥満に注意
肥満になると血圧は高くなります。原因となる過食を防ぐため、常に腹八分を心がけましょう。できれば毎日体重を確認するようにしましょう。
高齢者は、特にたんぱく質を多めに摂る
高齢になると、筋肉量や骨量は減っていきます。筋肉量が減少すると転倒しやすくなり、骨量が減少すると骨折しやすくなります。また、血液中のたんぱく質が減ると、免疫力が低下して風邪などの感染症にかかりやすくなります。また、認知機能の低下を招く場合があります。ただし、たんぱく質は摂りすぎると腎臓に負担がかかってしまうことがあるため、摂取量については主治医に相談しましょう。
たばこは吸わない・禁煙する
喫煙は健康のすべてに影響を及ぼします。喫煙者は禁煙しましょう。
◎正しい生活習慣を続ける工夫
生活習慣の改善を長続きさせるのは難しいものです。年齢を重ねても健康で過ごすためには、日々の努力が欠かせません。そのためには「運動が嫌い」、「食べ過ぎてしまう」、「間食が多い」など、自分の弱いところを意識して目標を決めるとよいでしょう。毎日の状況を簡単に記録すれば、モチベーションアップにつなげることができるのではないでしょうか。かかりつけの先生や看護師、管理栄養士と相談しながら目標を決め、診察時に決めた目標の進捗状況を報告してみるのも、モチベーションアップの1つになるのかな・・と思います。
愛媛大学大学院医学系研究科 循環器・呼吸器・腎高血圧内科学教授 山口修先生監修 検査結果の異常から心臓・腎臓の声を聴きましょう より引用