ご飯を抜けば糖尿病が良くなるってほんとでしょうか?
これは糖質制限食(低糖質食)が糖尿病の治療として良いかどうかという問題です。
最初の糖質制限食の、ある程度しっかりしたエビデンスはDIRECT(デレクト)試験です。エビデンスとは効果があることを示す根拠・証拠です。
DIRECT試験は2008年に2型糖尿病あるいは冠動脈疾患があるイスラエル人625名に対したものです。この人たちに対して糖質120g以下の糖質制限食、地中海式エネルギー制限食(オリーブ油をふんだん
に使用し、魚と果物、野菜を多用した食事です)、低脂肪低エネルギー食の3つの群に分けて体重とHbA1cと脂質の改善効果をみました。観察期間は2年間でした。 DIRECT試験での減量効果は低糖質食で1
番大きかったのです。問題のHbA1cの低下も糖質制限食で-0.9%、地中海食で-0.5%、低脂肪低エネルギー食で-0.4%の低下がみられ糖質制限食で最も効果が大きかったです。脂質も同様でした。この結果が
世に出てから低糖質食が注目されるようになりました。
しかしこの試験の問題点も指摘されてます。それは低糖質食の遵守率が80%と低かったことと、なによりも糖質制限食の群も2年間の観察期間が終わってみればその摂取カロリーは低エネルギー食と同じくらい
であったということです。これではこれらの低下効果も糖質制限によるものかエネルギーによるものか定かではなくなってしまいますね。
逆に糖質制限食は良くないという報告も多いです。例えば糖質摂取が少ない集団で糖尿病の発症率が高かったとか、死亡率が高かったとか、動脈硬化度が低炭水化物食にて悪化したというものなどです。
2012年アメリカ糖尿病学会誌に発表されたレビュー(総説)では糖質70g/日以下の糖質制限食は高血糖、インスリン感受性の改善がみられるものの例数、観察期間、脱落例、無作為化が不十分で実際の 逆に糖質制限食は良くないという報告も多いです。例えば糖質摂取が少ない集団で糖尿病の発症率が高かったとか、死亡率が高かったとか、動脈硬化度が低炭水化物食にて悪化したというものなどです。
HbA1cの改善効果は分からないとしました。
米国糖尿病学会(ADA)では、
特定の栄養素のみに関心を促すことはせず、個々の人の食パター
ンを維持しながら総エネルギー摂取量の適正化を優先すべき。
とし、地中海食でも糖質制限食でもよいがエネルギー摂取量が大きくならないようにとしてます。そして、
現在の体重の5~7%減量をめざす現実的な食事エネルギー量と栄養バランスを指導すべきある。 としてます。
翻って日本糖尿病学会では
総エネルギー摂取量の制限を最優先すべきであり
炭水化物のみを極端に制限することは、尊守性、安全性に問題がある。
推奨栄養比率は炭水化物50~60%、たんぱく質20%、残りを脂質とする。
としてます。糖質制限食は好ましくないということです。炭水化物と糖質はほとんど同じものです。
こんな中で北里大学の山田悟先生は穏やかな糖質制限食を提唱して成果を上げてます。主食を糖質で1食20gにして、1日70~130gにします。実際この位しか摂らない人も結構いますが、食べすぎを防ぐに役立つのであれば良いでしょう。その打ち分けは
主食で糖質20gを3食
副食(おかず)で糖質20gを3食
間食で糖質10g
となります。これで1日130gになります。
ちなみに糖質20gは ご飯55g(半膳)
うどん100g(半玉)
食パン8枚切り1枚
に相当します。糖質を減らすと言ってもこれくらいの主食は摂っていたいものです。
さて人間にとって最低限の糖質量はどのくらいでしょうか?
ブドウ糖しか利用できない脳、神経組織、赤血球の糖質必要量は
1日130g
でこれだけは最低必要です。
糖質が足らない時は筋肉や脂肪組織を崩して肝臓から糖を作ることは出来ます。しかしこれに頼らずに必要な糖質を食事で確保するには更に
ご飯毎食100gとおかずで1食の糖質が60g
1日で糖質180gを確保する必要があります。
夕食のみ主食を摂らないも最近は多くなっております。言ってみればプチ糖質制限食ですね。これも朝、昼しっかり糖質を摂っていれば許容の範囲内でしょう。
ご飯を食べれば食後に血糖は上昇します。しかし糖質は人間にとって必要不可欠なものです。従って、あまり糖質の量を気にするより、主食を白米より食物繊維の多い麦ごはん、玄米食にした方がむしろお勧めです。これらの未精白穀物は食後の高血糖を抑えます。とりわけ麦は消化しやすく、白米との合いそうも良いです。好みに合わせて白米との比率を1割、3割、5割、10割から選ぶと良いでしょう。可能であれば5割(白米:麦 1:1)にしたいものです。血糖降下作用も大きくなるからです。